映画『対外秘』は選挙の闇がわかる骨太作品!
映画は公開のタイミングも重要。世の中を賑わせているネタと重なれば、それだけ関心を集めることができるからだ。このところ日本では衆議院の解散総選挙、アメリカでは大統領選と、何かと“選挙”のニュースで騒然としている。この流れに乗って選挙を描いた本作を観れば、より衝撃と興奮を味わえることだろう。 この『対外秘』は、おとなり韓国の選挙がメインのトピックとして描かれる。舞台は1992年の釜山。国会議員の選挙を発端に、政治家や裏稼業の面々が激しい攻防を繰り広げるのだが、その裏事情、裏工作がかなりヤバいレベル。一応フィクションなのだが、本当に起こっていたかも……という臨場感がみなぎっており、現在の日本の選挙にも、余計な心配だが「もしかして?」と疑いの目を向けたくなってしまう。そんなリアリティに満ちた一作だ。主人公は与党の公認候補で出馬する予定だったヘウン。しかし黒幕の実力者が、自分の言いなりになる天下りの候補者を見つけ、ヘウンは公認から外される。無所属となったヘウンだが、地元住民からの熱い支援を受けて大躍進。面白くない黒幕は、とんでもない手段で選挙の結果をコントロールすることに! 党の公認ではないと選挙を勝つのが難しい。地元の開発と政治家には必ず癒着がある。政治家はアウトローな勢力がバックアップしている。そしてメディアに圧力をかけるのは常識。こんな感じで、選挙や政治の“闇”ネタが次々と投下され、それがエンタメとしてドラマの中で機能しているのが本作の魅力。かなりハードなバイオレンス描写もあるが、裏切り、また裏切りの世界ではこうなるしかないと、力技で納得させられる印象だ。政治家から官僚、ギャングまで、キャストたちの顔つき、振る舞いが“いかにも”なムードなのが、過激なストーリーに説得力を与えている要因かも。日本でメジャーな知名度を持つ俳優は出演していないが、だからこそ役との一体化がハイレベルに感じるのだろう。韓国俳優の層の厚さを実感できる作品でもある。 『対外秘』11月15日公開 製作/ソン・ガンホ、チャン・ウォンソク 監督・脚本/イ・ウォンテ 出演/チョ・ジヌン、イ・ソンミン、キム・ムヨル、キム・ムヨル 配給/キノフィルムズ 2023年/韓国/上映時間116分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito