「兵庫県警はあまりに腐っている」泣いて訴えた機動隊員は、24歳でなぜ死んだのか パワハラを認めさせるまで8年半、両親の長すぎる闘い
2015年秋、兵庫県警機動隊は異常事態に陥っていた。わずか1週間の間に、若い男性隊員2人が命を絶ったのだ。しかも2人は、同じ部隊の所属だった。 【写真】兵庫県警巡査だった木戸大地さんの父、一仁さん
木戸大地巡査=当時(24)=はそのうちの1人。広島出身で兵庫県警に2009年に採用され、機動隊には12年9月に配属された。父の一仁さん(75)によると、学生時代から警察官になるのが夢だったという。 入隊後、帰省した息子と一仁さんは酒を酌み交わしたが、異変を感じた。大地さんは泣きながらこう訴えたという。 「いまの兵庫県警はあまりにも腐りきっとる。俺は大学出とらんけえ、出世は限界が見えとる。だけど、俺には体力がある。体力を活かして資格を取得して、少しでも上に昇って、一人でも腐敗している組織を変えたい。俺と同じようにつらい思いをして頑張っている同期や仲間のためにも、自分一人だけが広島に帰ることはできん」 その言葉通り、大地さんはその後、レンジャーなどの難関資格を次々と取得。将来を嘱望される存在だった。婚約者もいた。それなのに、なぜ死ななければならなかったのか。(共同通信=力丸将之)
▽息子が残した3通の遺書 大地さんが亡くなった後、寮の部屋から3通の遺書が見つかった。あて先は婚約者、家族、そして先輩隊員。 婚約者には謝罪の言葉を書き連ね、幸せになってほしいと願っていた。家族には先立つことへの謝罪やこれまでの感謝がつづられていた。 そして、先輩隊員あての遺書には次のように書かれていた。 「Tさん あなたの思い描いた通りになってよかったですね もうこれ以上装備に、あなたに関わることはないですよ」 わずか数行の短い遺書。Tは当時、機動隊の装備係の男性巡査長。大地さんとTとの間に何があったのか。 大地さんが亡くなって2カ月が過ぎたころ、一仁さんの元を訪ねた兵庫県警幹部が「報告書」を手渡した。大地さんの死について調査されたことが簡単に書かれ、結論は「自殺した原因を特定することはできなかった」だった。 一仁さんにとって、到底納得できる内容ではない。