「兵庫県警はあまりに腐っている」泣いて訴えた機動隊員は、24歳でなぜ死んだのか パワハラを認めさせるまで8年半、両親の長すぎる闘い
「息子は組織の中で何と闘っていたんだろう。兵庫県民を守らなくちゃいけない警察官が、警察組織と闘っていたんです。心の中で」 真実を明らかにすべく、一仁さんは2017年、兵庫県に対する損害賠償請求訴訟に踏み切った。 ▽502ページの調査結果、遺族にはたった4ページ 実は兵庫県警は、大地さんが自殺を図った日から約2カ月の間に、のべ128人の警察官から計約160時間にわたり聞きとりをし、502ページの書類にまとめている。一方、一仁さんが渡された報告書はたった4ページ。 裁判の中では、502ページの大半が開示された。Tがどんな人物なのか、詳しく書かれている。 Tの性格について、聴取された機動隊員ら関係者の回答はおおむね共通していた。「真面目、熱血、体育会系」。同時に「指導が厳しい、しつこい、細かい」も共通している。 Tは2011年9月に機動隊に配属された。その後、けがなどの理由で2014年3月に装備係へ転じている。同僚の中には、大地さんの自殺を受け、Tを糾弾している内容もあった。「個人的に許せない。警察官として、人間として失格だ。排除されるべき人間だ」
聴取記録には、大地さんに対するTの行為も書かれていた。それによると、以前から指導とは言いがたい行為をくり返しており、亡くなる直前まで続いている。例えば、次のような行為だ。 (1)大地さんが車両を使用しようとした際、Tは鍵を貸し出さなかった (2)大地さんが直前まで運転していたマイクロバスのナンバープレートが折れ曲がっていた。原因が不明であるにもかかわらず、報告書の提出を強要した (3)ナンバープレートの件で、公休日に呼び出して叱責した (4)車両の運転日誌の記載ミス部分に「ボケ木戸」と記した付箋を貼った (5)2015年7月から自殺の直前まで、大地さんに、これまでの「ミス一覧表」の作成を執拗に命じた。その過程で「カンニングの件もあるだろう」と何度も追及した。 「カンニングの件」とは、2013年9月、大地さんがクレーンの玉掛け講習で筆記試験を受けた際、一緒に受験していた同僚隊員に答案を見せていたことだ。Tはカンニングだと主張するが、受験者全員が合格するような試験で、大地さんは回答に必要な条件を同僚に聞かれ、それを教えたに過ぎない。この点については地裁判決でも「一般に禁止されているカンニング行為とは性質が相当異なる」と認定されている。