成田LCCターミナル、保安検査後の商業施設拡充へ 開業10年でニーズ多様化
成田空港を運営する成田国際空港(NAA)は、2025年4月8日で開業10周年を迎えるLCC(低コスト航空会社)用の第3ターミナルについて、保安検査場を通過後の商業施設拡充を視野に入れる。10年前の開業当時は、必要最低限の設備にとどめ、LCCが空港に支払う施設利用料を抑えることが重視されたが、利用者層の拡大や訪日客の増加により、搭乗前に立ち寄れる飲食店など商業施設の充実が課題となってきているためだ。 【画像】新駅が開業する成田空港ワンターミナル構想 ◆「本当のニーズもわかってきた」 NAAの田村明比古社長は、現在の第3ターミナルについて「保安検査の先が殺風景。開業当時は、できるだけコストを安くしてシンプルに作る、ということだったと思う」と、率直な感想を述べ、開業当時のLCCや空港が置かれた状況に触れた。 「LCCが日本に生まれて来年で13年。お客さまのニーズも変化し、本当のニーズもわかってきた。航空運賃は高くない方がいいけれど、食事や買い物にはお金をたくさん使ってもいい、というお客さまもいらっしゃるし、全部安いほうがいいという方もいる。多様なニーズにお応えできるような対応が必要だと、社内で検討しているところだ」(田村社長)と語った。 第3ターミナルは、これまでもターミナル間の連絡バスを運行するルートの短縮や、トイレの見直し、出発・到着動線の分離、保安検査機器の高度化、歩行者用通路の刷新など、利用者数の増加に合わせて利便性を高めてきたが、保安検査場から先の施設は後手に回っていた。田村社長は「短中期で考えている」とし、2020年代後半には施設を拡充するとみられる。 2029年3月末には、第3滑走路(C滑走路)の新設が計画されており、その後は2040年代の完成を目指して現在3つある旅客ターミナルを集約する「ワンターミナル」構想を進める。このため、あと10年から20年程度は現在の施設を更新しながら使っていくことになり、利用者側のニーズの変化を反映していく必要がある。 ◆那覇は連絡バス不要に 成田の第3ターミナルは、2015年4月8日に開業。新ターミナル開業は22年4カ月ぶりで、内装は天井を貼らず、案内表示を床や梁(はり)を活用して掲示。保安検査場前には、国内空港最大(当時)となる座席数約450席、広さ680平方メートルのフードコートを設けた。 一方、保安検査場を通過後は、国際線が発着する側は免税店が4店舗、国内線が利用するサテライトは食品を中心に扱う売店が1店舗と少なく、保安検査前に食事や買い物を済ます前提の構造だ。 FSCが羽田へ路線移管するなど成田の発着便を縮小した結果、第1や第2ターミナルに余裕が生じたせいか、新規就航するLCCでも第3ターミナルに乗り入れないところもみられる。 日本初のLCCターミナルができたのは那覇空港で、2012年10月18日に開業。その10日後の同月28日に、関西空港にLCC専用の第2ターミナルがオープンし、成田の第3ターミナルは3番目となった。 このうち、那覇空港は2019年3月18日に現在使用している「際内連結ターミナル施設」が開業。国内線と国際線のターミナルの間にある施設で、LCCの利用者も連絡バスでの移動が不要になった。 海外では、コロナ前からターミナル運営の見直しが進み、発着地や航空会社が加盟するアライアンスなど、LCCやFSC(フルサービス航空会社)といった航空会社のビジネスモデルとは別の基準でターミナルを使い分ける空港が増えている。 10年前は簡素な施設が求められて誕生したLCCターミナル。日本でもLCCが定着しつつある中で、ターミナルの考え方を見直す時期が来ているともいえる。
Tadayuki YOSHIKAWA