<独占インタビュ-4>カヌー銅の羽根田 「現役時代は結婚できない」
カヌー銅メダリスト、羽根田卓也(29、ミキハウス)の独占インタビューの第4回では、10年にわたるスロバキアでの生活について語ってもらった。浮き彫りになったのは、孤独と戦う姿だった。 ――この10年、スロバキアから帰国しようと考えたことは? 「ただの一度もありませんでした。逃げて帰るわけにはいきません。でも僕よりも生活を支えてくれていた父には、あったんじゃないですか? でも父のプライドが許さずに、がんばって仕送りを続けてくれました。本当に感謝です」 ――お父さんからは、どれくらいの援助をもらっていたのですか? 「最初の頃はコーチ料がありましたから、そこに加えて家賃が3、4万円に、普段の生活費が10万円、そして、合宿費、遠征費がかかります。年間400万円くらいは、恥を忍び、頭を下げて仕送りをもらっていました。アルバイトを少しやったこともあるんですが、スロバキアの賃金だと、たいした足しになりません。父は、『アルバイトをするくらいなら練習しろ!』と。話をしたように練習以外は休む必要がありますから」 ――家族の協力があってつかんだメダルですね。 「感謝は当然ですが、銅メダルで、ひと安心した気持ちはあります。五輪でメダルを取ることを期待してもらって、いろんな支援をもらっていました。その期待に応えられるのか、という危機感がありました。『やっと取れたか』と、父にも少しは安心してもらえたのではないでしょうか。これからは、楽しんでもらえるかどうか」 ――スロバキアではどんな生活を? 「午前に1時間半、午後に1時間半くらい、ドナウ河にある人工コースで練習を行います。ドナウ河は、絵画では綺麗に描かれていますが、実際は汚い川ですけどね(笑)。陸上トレーニングも、週に2回くらい30分から1時間行います。シーズン中は、カヌーの練習に集中できるように、なるべく体力をセーブしておくというスタンスなんです。シーズン中の陸トレはウエイトも重くせず、バランス、筋肉のばらつきを防ぐための軽い負荷で行い、練習後の乳酸を流す程度の軽いランニングくらいです。ジムや、そのあたりの道端を走っています」 ――練習以外の時間は? 「ご飯を自炊して食べて、ベッドの上で寝ています、ほとんど休んでいます。練習以外ではできるだけエネルギーを使わないようにしているんです。シーズンに入って、大会期間中は、暇だ、どっか行きたいと思っても、なるべくベッドの上にいるようにしています。無駄なエネルギーを使うことで、練習の質が下がり、レースのパフォーマンスに影響することがあるので、なるべく休むようにしています」 ――修行僧みたいな生活じゃないですか? 「よく日本であるような、明日休みだから、きょうは飲みにいけるぞ!、みたいな生活は僕には考えられません」