「2024年秋ドラマ」オススメ5作&傾向分析 “超安定路線”で際立つ「日曜の難しさ」とは
これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、『ライオンの隠れ家』『嘘解きレトリック』の2作。 『ライオンの隠れ家』は、自閉スペクトラム症の弟に合わせて規則的な生活を送っていた主人公のもとに謎の少年が現れ、日常が乱されていく……しかし弟と少年の間に絆が芽生え、成長していく様子や、それを守ろうとする兄の姿に感動を誘われる。さらに湊かなえ作品などの“イヤミス”を放送してきた金曜ドラマらしい不穏なミステリーも健在。柳楽優弥に食らいつく坂東龍汰、無垢な子役・佐藤大空のやり取りは必見で、3人の暮らしがどんな着地を魅せるのか興味深い。 『嘘解きレトリック』は、月曜夜の視聴にフィットするライトミステリー。前述したベテラン監督たちが若い鈴鹿央士と松本穂香の魅力を引き出し、優しくも微笑ましい関係性を見せて視聴者を癒している。昭和元年が舞台の物語だが、NHKのようなリアルを追求した本格志向ではない映像は親しみやすさがあり、幅広い世代の見やすさにつながった。 その他、『放課後カルテ』は、病気を扱う医療ドラマでありつつ、小学校が舞台の学園ドラマであり、家族を絡めたホームドラマでもあるハイブリッド仕様。医療ドラマは外科手術が主流でジャンルの幅がせまくなりがちだが、子どもたちを当事者にすることで切実さを感じさせている。 『宙わたる教室』は数ある定時制が舞台のドラマの中でも、生徒の背景を最も丁寧に描いた作品ではないか。彼らに接する教師の距離感が心地よく、宇宙につながる今後の展開も楽しみ。『海に眠るダイヤモンド』は、盤石のスタッフ&キャストに向けられる期待値に負けない力感あふれる仕上がり。 これら以外では、グループライティングの可能性を見せ、ぜひ「一気見」してほしい『3000万』と、いい意味で「笑わせるためなら何でもアリ」の『民王R』もおすすめとして挙げておきたい。 さらに40年の時を経た漫画・アニメの実写化『ウイングマン』(テレ東、火曜24時30分)もクオリティが高く、特撮アクションの第一人者・坂本浩一監督の演出も必見。「学園青春ラマ+特撮アクション」という稀有なジャンルであり、40代以上はもちろん10・20代にも見てほしい作品となっている。 「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局の動画配信サービスなどでチェックしてみてはいかがだろうか。 ■2024年秋ドラマおすすめ5作 No.1 ライオンの隠れ家 (TBS 金曜22時) No.2 嘘解きレトリック (フジ 月曜21時) No.3 放課後カルテ (日テレ 土曜21時) No.4 宙わたる教室 (NHK総合 火曜22時) No.5 海に眠るダイヤモンド (TBS 日曜21時) ■ 木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。
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