存在感のない首相の言葉 「またトラ」相手はヤバいよ 書く書く鹿じか
若者言葉がわからない。女の子たちの会話に耳を傾けていると、「エモい」とか「チルい」だとか聞こえてきた。外国語のようでチンプンカンプンである。 【写真】親指、中指、人差し指、「Vサイン」も…答弁求め方も個性的な石破茂首相 「エモい」は「エロい」と「キモい」を合体したのか、と思ったら違った。「感情的」という意味の英語のエモーショナルから、感動して心が揺さぶられる状態を表すという。「チルい」はこれも英語のスラングのチルアウト(ゆったりくつろぐ)に由来し、リラックスして心地いい時である。「チルる」「チルする」という使い方もするそうだ。 以前から使われているが、まったく違った意味で用いる言葉もある。「やばい」は「危険や不都合な状況が予測されるさま」と辞書にある。語源は「あやぶい(危うい)」が変化したとも、江戸時代に牢屋や看守を厄場(やば)と呼んだ犯罪者の隠語からともされる。それが若者にかかると「すごい」とか「素晴らしい」といったポジティブな言葉になる。 文化庁が毎年行っている「国語に関する意識調査」によると、「やばい」を「とても素晴らしい」などの意味で使うという回答が、16~19歳で91・5%、20代で79・1%に上った。平成26(2014)年度の調査だから、もっと増えているだろう。最近は真逆の二つの意味を併記する辞書もある。タレントの出川哲朗さんの「ヤバいよ、ヤバいよ!」は本来の意味のようだが、そのうち通じなくなるかもしれない。 若者言葉は感覚的で、省略された短い表現が多い。はやり廃りのサイクルが早く、次々に生まれて、古き良き日本語を駆逐してしまう。作詞家の阿久悠さんは20年ほど前、産経新聞の連載コラム「阿久悠 書く言う」で警鐘を鳴らした。<今、日本文化滅びの危機にあるものは言葉であり、何でも省略して軽便化と効率化を図る傾向である。それらはやがて隠語化してそもそもの言葉を食い尽くす。> こんな指摘もした。<文字は手書きから入るべし。口汚い言葉も自分の手で感情を込めて書いてみると、如何に酷(ひど)いことを言おうとしていたかがよくわかる。> 匿名で悪口雑言を書きなぐる交流サイト(SNS)の弊害を予見していたかのようだ。