マグロ・カツオの替わりになれるか? 原料に"ブリ"を使ったシーチキンはどんな味?
ツナ缶メーカーが原料不足で苦しんでいるそうです。ツナ缶はマグロやカツオで作られますが「どちらも漁獲量が減っているうえ、肉食中心だった米欧や中国が魚食にシフトしつつあって、世界中で魚の取り合いになっている」と、缶詰博士の黒川氏は語ります。 【写真】マグロ・カツオの替わりに「ブリ」を使ったシーチキン、見た目の色は違う 「そこではごろもフーズが打った手がすごい。日本近海で豊漁が続いているブリを原料にしちゃったんです」 ブリのシーチキンって、一体どんな味なのでしょう。博士、徹底的に分析してください! ■感想さまざま 去年(2023年)8月に、はごろもフーズが「シーチキンEvery(エブリ)」を発売した。原料はマグロやカツオではなく、何とブリであります。すでにネット上には何本か試食レポートが上がっていて、 「今までのシーチキンと変わらない」 「今までのシーチキンより酸味がなくて食べやすい」 と、感想がさまざまに分かれている。果たしてブリ原料のシーチキンは従来品とどう違うのか? ■エキスも違う エブリと比べるのは「シーチキンLフレーク」(原料:キハダマグロ)と「シーチキンマイルド」(原料:カツオ)で、タイプはすべて油漬けをチョイス。 使われている油はどれも大豆油で、基本的な味付けが塩と調味料(アミノ酸等)なのも同じであります。でも、それ以外の原材料は違う。 エブリ:オニオンエキス使用 Lフレーク:野菜エキス使用 マイルド:エキス不使用 魚種によってエキスが違う(or不使用)なのには理由があると思う。 例えばエブリがオニオンエキスを使うのは、オニオン味のシーチキンにしたいからじゃない。ブリの魅力を引き出しつつ、従来のシーチキンとあまり風味が変わらないようにするための工夫だと思う。 ■エブリは脂の甘みあり 内観を比較すると、色合いがかなり違っていて驚く。エブリ(ブリ)は褐色、Lフレーク(キハダマグロ)はピンクがかった白、マイルド(カツオ)は赤みがかった褐色だ。次に匂いと味を比較してみる。 エブリ:明らかにブリの匂いで、とくに脂身を思わせる甘い匂いがする。食感は柔らかく、肉の繊維が細かい。飲み込んだあとは脂の甘味が残る。 Lフレーク:慣れ親しんだツナの匂いで、その魚臭は穏やか。舌に乗せた瞬間に酸味とうま味が広がる。食感はブリよりしっかりしていて、後味はブリほど甘くないがうま味が残る マイルド:慣れ親しんだツナの匂いだが、鉄分っぽい匂いがLフレークより強い。酸味もLフレークより強く、うま味はあっさり。食感はブリと同じく柔らかで、肉の繊維が細かいのも同じ ちなみに酸味はうま味の一種で、マグロやカツオがおいしいのは酸味があるからだと思う。なので僕はブリよりもマグロ、カツオのほうがだんぜん好きであります。 ■大いにアリ かくのごとし。エブリにみじん切りの玉ネギ、シシトウ、ココナッツフレーク、レッドペッパー、ライム汁を混ぜれば、モルディブ共和国の名物「マスフニ」が缶成! ツナ缶の輸出が盛んな同国では、こんな素敵な料理を毎日のように食べているのだ。 ココナッツの甘い香りとライムの爽やかさ、そしてピリ辛味がブリとも良く合っていて誠にウマい。ちなみに本来はシシトウじゃなく青唐辛子を使うんだけど、手元になかったので代用しております。 こうして味付けすると、もはや原料がブリなのか何なのかまったく分からない。もともとシーチキンはさまざまな料理に使われ、味変されるのだ。となれば、漁獲量が安定しているブリを使うのは大いにアリだと思う。 缶詰情報 はごろもフーズ/シーチキンEvery(エブリ) 70g 253円 スーパーやコンビニ、ショッピングサイトで入手可 ■ 缶詰博士 かんづめはかせ 昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。初のエッセイ本「缶詰だよ人生は」(本の泉社刊)も絶賛発売中! 公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。
缶詰博士