衝撃!大迫勇也&酒井宏樹のW杯最終予選“天王山”豪州戦欠場が発表…緊急事態に問われる森保監督の真価
決戦の地シドニーで全員がそろって練習できるのは、早くてオーストラリア戦を2日後に控えた22日となる。特にヨーロッパ組は東南アジアを経由しての長距離フライトに時差が加わるため、コンディションは未知数と言わざるをえない。 戦い方の幅を広げるよりも、先発メンバーを固定させた上での熟成を重視してきた森保監督の采配は、右サイドバックにも例外なく影を落とす。 ファーストチョイスは、敵地マスカットで昨年11月に行われたオマーン代表戦で先発フル出場した山根視来(28、川崎フロンターレ)となる。 しかし、右ウイングの伊東純也(29、ヘンク)が圧倒的なスピードを駆使して2ゴール1アシストをマークし、八面六臂の大活躍から「戦術・伊東」とまで呼ばれた前回シリーズは、その後方で代役のきかない存在感を放っていた酒井を抜きには語れない。 ヨーロッパ仕込みの強度の高い対人守備でにらみをきかせながら、伊東をできる限り高い位置でプレーさせたのが酒井ならば、状況によっては伊東を追い越し、その外側だけでなく内側のレーンを使って攻撃に厚みをもたらしたのも酒井だった。 サイドアタッカー出身の山根も、攻撃参加を得意としている。史上2チーム目の3連覇を目指す王者・川崎の右サイドバックとして、開幕から7試合連続フル出場を果たし、19日のサンフレッチェ広島戦では今シーズン2ゴール目を決めた。 絶好調の山根に求められるのは、右サイドで伊東を生かしながら共存できる縦関係の構築となる。酒井と同じプレーはできない。ならば、山根ならではの存在感を、伊東が合流する22日以降で融合させられるかどうか。ここでも時間との戦いとなる。 16日のメンバー発表会見で、森保監督はこんな言葉も残している。 「われわれのベースとなる戦い方はもちろんだが、オプションとなる戦い方を準備しておく必要もある。状況によってはチームで選手たちが共有しながら使い分けていけるよう、与えられた準備期間の中で最善の準備をしていきたい」 ベースとなる戦い方は、言うまでもなく4-3-3となる。オプションは1月の中国戦でも後半途中から導入した、久保建英(20、マジョルカ)をトップ下にすえた4-2-3-1に加えて、ここにきてもうひとつが考えられるようになった。 森保監督は酒井の代わりに、左足首の負傷から戦列復帰を果たしている右サイドバック室屋成(27、ハノーファー96)ではなくセンターバックの中谷を招集した。 現状で右サイドバックは山根だけとなった。19日の京都サンガF.C.戦で右サイドバックとして今シーズン初先発を果たし、フル出場した長友も想定しているかもしれない。 しかし、センターバックでプレーできる選手が多い陣容を踏まえれば、3バックも視野に入れている可能性もある。実際、森保監督はこんな言葉も残している。 「われわれの姿勢として勝ち点3を勝ち取りに行くことを考えながら、理想通りにいかないことも想定して、最後に勝ち点1をしっかり持ち帰ることも必要になる」 オーストラリアに勝てば7大会連続7度目のワールドカップ出場が決まる。しかし、引き分けでも勝ち点3ポイント差はキープされ、帰国後の29日に行われるベトナム代表との最終節(埼玉スタジアム)で引き分け以上の結果を残せばいい。 最も避けなければいけないのは直接対決で敗れ、得失点差で上回られるオーストラリアに抜かれてグループBの3位に転落するケースだ。この場合は自力での出場獲得が消滅し、ベトナムに勝った上で、オーストラリア対サウジアラビアの結果待ちとなる。 森保監督をはじめとするコーチングスタッフは19日夜に、20日にリーグ戦がある中谷を除いた7人の国内組とともに日本を飛び立った。シドニーまでの機内ではさっそく、大迫と酒井を欠いた陣容での戦い方に考えを巡らせたはずだ。 批判を浴びながらも、メンバーを固定して戦った時間はもう取り戻せない。このまま“ツケ”を払うのか、それともすぐに実行に移せるレベルでオプションを準備しているのか。非常事態を前にして、代表監督としての真価が問われようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)