自動車チューニングメーカーの「脱炭素戦略」。50周年を迎える老舗・トムスの社長にも直撃!
――トヨタのハイブリッド車は累計2000万台の販売実績があります。それをベースにすればパイは大きいし、コスト面も抑えられる。ちなみにEV走行の目標距離は? 谷本 最低50㎞ですね。 ――絶妙なところを突いていますね。トヨタのハイブリッド車のEVモードというのは、静かで滑らかにスッと走れますが、距離は1~2㎞が限界で、すぐに「ブン!」とエンジンがかかる。その瞬間に「ああ......」とガッカリする人が多い(笑)。 EV航続距離が増えれば、ユーザーの喜びはアップするでしょうし、バッテリーを使い切ってもハイブリッドなのでインフラに左右されず長距離走行も楽々こなせるわけですね。 ■EVプラスの壁はハイブリッドの心臓部 ――今回、ベース車にアルファードを選んだ理由は? 谷本 アルファードは個人だけでなく商用利用も多いモデルです。企業では環境対応は必須項目ですが、その一方で、「まだ使えるクルマをすべてEVに入れ替えることが本当に環境対応なのか?」みたいな議論がある。そこをEVプラスなら乗り越えられる。 ――ちなみに、EVコンバージョンだと最低400万円というお話でした。このアルファードのいわゆるハイブリッドコンバージョンのお値段は? 谷本 大前提として「ある程度量産化できれば」という話ですが、100万円ぐらいでの提供を考えています。 ――EVコンバートと比べると現実的なお値段ですね。 谷本 あとは10万円単位でどこまで価格を落とせるかはトムスの企業努力かなと。 ――開発の進捗状況は? 谷本 正直、いろいろな壁にブチ当たっています(笑)。 ――やはりトヨタのハイブリッドシステムの心臓部に入り込むのは大変ですか? 谷本 大変ですね。トヨタ車は安全・信頼のために制御系のガードが鉄壁なので解析が本当に難しい。 ――実はHKSも今回の東京オートサロンでハイエースの電動化を提案していました。今、チューニングメーカーは脱炭素に向けた取り組みが活発化しているなと思いました。 谷本 HKSさんには正直驚きました。まぁ、手法は異なりますが、同じようなことを考えていますよね(笑)。