自動車チューニングメーカーの「脱炭素戦略」。50周年を迎える老舗・トムスの社長にも直撃!
■EV走行の目標距離は最低でも50㎞ ――最近、トムスの事業形態がスゴく面白いですね。特にアルファードEVプラスは非常に興味深い存在です。 谷本 ひっそりとやっていたんですが、山本シンヤさんに見つかってしまった(笑)。 ――そもそもレーシングが主体のトムスが、なぜEV事業をやるんですか? 谷本 モリゾウさん(豊田章男トヨタ自動車会長)が言うように、今の自動車業界は100年に一度の大変革期です。 トムスはモータースポーツに半身を置いていますが、残りの半身は公道を走れるクルマのカスタマイズとかチューニングです。このまま電動化が進めば、われわれにとっては死活問題です。そこで、トムスは今後どこに軸足を置くべきかを考えたわけです。 ――それはいつ頃の話で? 谷本 5年前ぐらいですね。モータースポーツに関しては割り切ってやっています。サーキットの独特のにおいや雰囲気で成り立っているスポーツなので、電動化について考えるより、チームのミッションとしては「勝つ」のが正解。イコール、年間チャンピオンを獲得するしかありません。 ――一方で、トムスのビジネスとしてはカスタマイズやチューニングも大切です。 谷本 トムスは内燃車のカスタマイズとチューニングを長年やってきた会社なので、電動化が進むと大きな影響を受けるのは明白です。ただ、われわれはレーシングカーの開発を行なってきた。当然、クルマの構造を熟知している。このノウハウは電動化時代にも活用できるなと。 ――今後、電動化の行きつく先をどう想定されています? 谷本 最終的にはEV化に進むと思いますが、100%EVの時代が来るという声に対しては懐疑的です。仮に日本が今の中国とか北欧みたいにEVの新車の占める割合が30~40%に増えたとしても、ハイブリッドも内燃車もたくさん残っていると思います。 そう考えたら、この移行期間に何ができるのかなと。それが、EVプラス開発のスタートとなりました。 そもそも日本は乗用車の保有年数が9年を超えています。それは経済的な側面もありますが、クルマの耐久性が上がっているのも事実です。もともと日本人には"モノを大切にする"という文化が根づいている。だったら既存車を少し工夫して環境対応車にしたらどうかと考えました。