「テレビは決して終わらない」元テレビマンの矜持…ネット時代に見せる真骨頂、70年の歴史に見るメディアの底力
地デジというデジタルトランスフォーメーション
2000年代に入るとテレビはデジタルの時代に突入することになる。国策としての放送のデジタル化が進行したからだ。 CS、 BSに続いて地上テレビ放送もデジタル化された。放送のデジタル化は世界の潮流だったが、放送事業者のコスト負担は総額1兆円ともいわれ、各社の経営に与えるインパクトは相当大きいものだった。しかしながら著者は以下のように記し、放送界が大きな転機を迎えたと見る。 2024年現在、地デジ化を俯瞰すれば、それは正しい選択だったと言えるだろう。世の中でこれだけデジタル化が進む中で、もしも放送局がアナログに固執し続けていれば、それは「前世紀の遺物」になっていただろう。地デジ化の英断は放送局に一足早い「DX(デジタルトランスフォーメーション)」をもたらしていた。コンテンツ制作においてもその効果は計り知れない。 一方で同時に進んでいたインターネットの普及と発達が、テレビにその座を脅かしかねないという警戒感を与えた影響も大きいといえる。テレビ各社は、地デジ対策に経営資源の多くを振り向けた結果、ネット対応が遅れた面があった。 テレビ業界は当初こそ静観の構えだったが、ほどなく真剣に対応せざるをえなくなってくる。2020年度のインターネット広告は2兆円を超え、地上テレビのそれを上回り一位になった。翌21年度はネット広告が新聞・テレビ・ラジオ・雑誌の広告総額を上回る結果ともなっている。こうした流れについて著者はこう記す。 メディアの覇者は、テレビからインターネットに明らかに代わり、「汎テレビ」時代から「汎インターネット」時代となった。 一方でこうも分析する。 「コンテンツ制作力」「長年の蓄積」「あまねく送信環境」は確かにテレビのストロング・ポイントであり、普遍的なものだ。(中略)それは守られなければいけないと思う。私自身は、インターネットが脅威であるとは思わない。しかし、その進化は想像を超えている。まったく予断を許さないというのも正直な感想である。
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