息子2人育てる障害のある夫婦「どう思われるか不安」保育園の保護者には障害打ち明けられず #令和の子 #令和の親
「どうして障害があったら子育てできないと決め付けられてしまうのだろう」。神奈川県茅ケ崎市のグループホームに入居し、家族4人で暮らす小林聡恵さん(28)は夫婦ともに軽度の知的障害がある。行政手続きなど苦手な部分は職員の助けを借りながらだが、共働きで家事も育児もほぼ自力でする。いずれはグループホームを離れ、民間住宅を借りる予定だ。その時大切なのは周囲とのつながり。だが、今も子どもが通う保育園で保護者たちには積極的に自身の障害を打ち明けられず、ママ友はまだつくれないでいる。「どう思われるか」と不安だからだ。(共同通信=船木敬太)
▽入居者仲間と同棲、予期せぬ妊娠
茅ケ崎市内にある3LDKのマンションのキッチンで、聡恵さんはスマートフォンに表示された手順を何度も確認しながら、手早く大根の皮をむき、短冊状に切っていく。忙しい日常の中でこなす家族の食事作りは聡恵さんの日課だ。 障害者が暮らすグループホームの多くは寮や下宿のような形態での共同生活だが、小林さん家族が所属するNPO法人「UCHI(ウチ)」は、「サテライト型」と呼ばれる仕組みを活用し、家族が他の入居者たちとは別の建物で独立して暮らせるようにしている。 聡恵さんは知的障害者が持つ療育手帳を5歳の時に取得。小学4年生の時に初めて親から告げられて障害があることを理解したという。子どもの頃は勉強についていけず、小、中学校は特別支援学級に通った。特別支援学校の高等部時代は家庭の事情で児童養護施設で過ごし「温かい家庭をつくりたい」との思いを抱くようになった。 高等部卒業後、入居したのがUCHIが運営するグループホームだった。UCHIは全国でも珍しく知的障害者の結婚や出産の意思を尊重し、積極的に支援している。職場や地域で人間関係をつくれず孤立しないよう「関係支援」を掲げており、「家族をつくりたいというのは当然のニーズで、最も重要な権利」との考えからだ。 夫の守さん(37)とはもともと高等部時代にバスケットボールの部活で知り合っていたが、UCHIの入居者仲間として再会し、食事や旅行を通じて親しくなった。 1年半の交際を経て2017年4月からサテライト型のグループホームで同棲。結婚に向けて貯金を始めた矢先の7月、予期せぬ妊娠が分かった。
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