39歳で脳卒中、集中続かず仮病と疑われたことも…突然起きる脳の障害に苦悩する患者や家族 「困り事減らしたい」医師たちの奮闘
長野県飯田市の病院に地域で唯一の専門外来
健和会病院リハビリテーションセンター(長野県飯田市)が、事故や病気による脳の損傷で記憶力や注意力が低下する「高次脳機能障害」の患者を定期診断する予約制の専門外来を開いている。県内4カ所にある同障害の支援拠点病院の一つで南信では唯一。2年前から症状を抱えた人の支援を続けており、リハビリテーション科の医師山本ひとみさん(58)は「患者さんや家族の困りごとを少しでも減らしたい」と話す。 【写真】専門外来で患者を診断する山本さん
注意力が散漫になったり集中力が欠ける高次脳機能障害
高次脳機能障害は、脳卒中や脳梗塞などの病気や交通事故などで発症。ぼんやりしたり、注意力が散漫になったりと集中力が欠けるようになるなどの症状があり、仕事を続けたり、自動車の運転が難しくなったりすることが多い。専門外来を設置したのは2022年。現在は3カ月に一度、日付を決めて診療する。リハビリテーションなどで回復を目指すことが治療の主目的だ。
24日に専門外来を受診した60代男性は「車を運転したい」と相談した。脳梗塞で障害が残っており、山本さんは「今すぐには難しい」と伝えた。ただ、運転免許取得への第一歩として、通所施設に通うことや作業所で働くことを提案。妻が管理する毎日の飲み薬を自分で管理することも勧め、身近な目標からゴールを目指すことを提案した。
低い認知度、周りの理解を得られにくく
同病院では23年度、外来入院やデイサービスなども含め、118人が利用した。当事者は病気や事故で突然症状を抱えることが多い。相談先が分からない上に、病名や症状の認知度も低いため、職場など周囲の理解を得るのが難しく、家族とともに悩む人が多いという。
家族会・当事者の会で続く地道な支援
専門外来以外にも、健和会病院では患者らでつくる家族会・当事者会の地道な活動が続いている。高次脳機能障害の患者や家族を支えようと、同会が発足したのは07年ごろ。病院職員が手弁当で運営し、年に3回ほど不定期で開催していた。当事者に寄り添う取り組みを強化する必要性が認識され、外来創設のきっかけの一つにもなった。 現在も、専門外来がある日に合わせ、家族会・当事者会を開く。患者は運動不足になりがちで、パラリンピック正式種目でもある「ボッチャ」をするのが恒例だ。活動を支える作業療法士の久銘次(くめじ)進悟さん(38)は「ボッチャを楽しみに来る人も多い。暗い表情だった患者さんが徐々に明るくなるとうれしい」。