独立の経験があると転職で不利になる?…一度独立した人が再度「会社勤め」にチャレンジする際に“必ず”するべき「準備」とは【人材業界のプロが解説】
独立が「転職」に及ぼす影響とは
独立されてから、私たちTESCOのようなエージェントに経歴書をお預けになる方々の多くは、志なかばであったり、真意とは異なるけれど何らかの理由があったりして、もう一度どこかの会社に勤めようと考えているのではないでしょうか。 設立した会社の業績が順調に推移しているのであれば、そちらで活躍されることが多いと思われます。しかし、繰り返しになりますが、独立という行為が自身の評価で「失敗」だったとしても、他から否定されるものではないと断言できます。そのため、独立経験のあとで就職を考える場合、よくいただく質問が「自分のことを使いにくいと思われないでしょうか」というものです。この点は、多くの方が気にされるところです。 心配はもっともで、「会社を飛び出して自分の法人を作った人は、もう集団の輪に入れないのではないだろうか」と考える古いタイプの会社も依然として存在します。また、自身の法人をどのように手仕舞いしたかという経緯は、第三者にわかりにくいところがあるので、「再就職してからもコソコソ副業を続けているのではないか」とか「会社の情報資源を流用しているのではないか」と周囲が疑心暗鬼になることがあります。 一方で、そういうことはまったく気にしないオープンな社風の会社もあります。
独立経験者が転職前にやるべきこと
冒頭で述べたように、現在は独立自体が非常に簡単になりました。法人設立のハードルが低くなったため、その評価の重要度は以前ほどではなくなっています。例えば、昔は株式会社を設立するのに資本金1,000万円が必要でしたが、その時代には資本金が一定の担保になっていました。つまり、ある程度の信用がなければ法人を設立することはできなかったのです。 その時代の会社と現在の0円企業は、同列には語れません。いまや有限会社も新設できなくなっていることはご承知のとおりです。法人を設立したことだけで高く評価される時代は過ぎ去りました。 ただし、法人格は上手に使えば個人のプライベートカンパニーとして様々な面で役立ちます。例えば、節税効果や商法の知識があれば得をすることもあります。その一方で、事情を知っている人から見ると、そうした点が疑われる要素になる可能性もあるでしょう。 ですから、独立経験の経験の後に何か思うところがあって転職を考える方は、まず独立したときの棚卸しが必要です。どのように仮説を立て、どのような目的で、どのようにトライし、どのような結果を経て、どのように現在のような結末を迎えたのか。法人がたどった経歴を客観的に説明できる準備を一般の候補者よりも重視しておくべきです。 独立経験があったなら、その始まりと終わり、そこに至る背景など「起承転結」を明確に説明できるようにしておきましょう。それができない場合は、実際に持っている経験や実績より低い評価を受けやすいので注意する必要があります。独立経験が再就職のマイナスになることはまずありませんが、あらゆる可能性を想定して、不利な評価を受けないよう心掛けておきましょう。 福留 拓人 東京エグゼクティブ・サーチ株式会社 代表取締役社長