後を絶たないリンゴ盗難、狭い道もくまなく警戒…自主防犯活動に記者が同行
収穫時期を迎えたリンゴの盗難が後を絶たない。被害を防ぐために農地をパトロールする自主防犯組織の活動に同行した。(家高ひかり) 【図】ひと目でわかる…畑の農作物盗難もリンゴ被害も増えている
11月上旬の午後8時頃、青森県五所川原市羽野木沢。五所川原地区防犯協会七和支部のメンバーがパトロール用の軽トラックに乗り込む。みぞれが降り、冷え込みが厳しい。
ヘッドライトをつけると、広大なリンゴ畑が浮かび上がる。車の明かりがないと辺りは真っ暗で、足元すら見えない。突然、周囲が青白く照らされる。警察が許可した車両に付ける「青色回転灯」だ。周囲が少し明るくなり、見回りしていることを周囲に知らせる役割もある。
同地区では「ふじ」「王林」の収穫期にあたる。メンバーは時速20キロほどでゆっくりと車を走らせ、怪しい車や人影がないかを見渡す。狭い道にも入っていく。
収穫前のリンゴが多い場所はさらに速度を落とし、じーっと目をこらす。もぎ取ったリンゴを入れた木箱がそのまま地面に置かれていないかも確認する。同支部長の福士憲逸さん(78)は「リンゴ畑がある限り狭い道でも進む。地区をよく知る人でないと難しい」と話す。この日は1時間ほど地区内を回り、パトロールは終わった。
福士さんは25年ほど活動し、これまで不審な人物や車両を見かけたことがないという。住民からは「パトロールをしてもらっているから盗難被害がない」と言ってもらえるのが励みだ。
ただ、パトロールは道路上からの監視が中心で、所有者でないと畑の奥まで入れず、道路から見えない園地の奥などは監視が難しいという。
盗難被害額、昨年大幅に上回る
青森県警によると、県内の今年のリンゴの盗難件数(25日現在)は3件で、被害額は計約77万円。37万円だった昨年を大幅に上回る。県内のリンゴ畑は広大で、農家の数も多いことから、防犯対策は農家に委ねられている面もある。
弘前市のリンゴ農園「みらいファーム・ラボ」は防犯カメラを自費で購入し、園内に複数設置している。収穫したリンゴを畑に放置せず、保管場所の施錠をし、畑の管理者が最終確認で畑を見回るなどして対策を徹底しているという。
担当者は「収穫した個数が、直接利益につながる。1年間やってきたことを無駄にしないためにも、自分たちで守らなければいけない」と話す。