HOMEが語る、今を生きるバンドが考える「モダンポップス」
「海外でやればやるほど、日本語がいいなと思う」
―歌詞においては、どんなことを大事にしているといえますか。社会や時代に対しての言葉も含まれているなと思うんです。 seigetsu:ラブソングっぽく違うことを言う、というやり方にハマってます。全部、ラブソングっぽいですけど、ちゃんと読んだら違うというか。 ―ラブソングを装いつつ、奥では、世の中に対して思っていることとかも表現しているということですよね。「木目」という言葉がポップスの歌に入ってて、しかもそれがタイトルになっているのがユニークだなと思うんですけど、これはどういう着眼点から生まれたんですか。 seigetsu:「木目」は喫茶店の木のテーブルを見て思いついたんですけど……エネルギーの流れ、というか。血管が詰まってるみたいで。人生の行き詰まりとか不安を、木目にたとえて書きました。 ―「Still Dreaming」は、どういうことを表現しようと思ったのかを聞いてもいいですか? seigetsu:自分のことをあまり話したくないんですけど、「Still Dreaming」は……最近の若者について書きました。なんていうか、健全じゃない考え方とか本能をしてるなと思って。間違ってんなあと。 shun:「魂を安売りするなよ」みたいなニュアンスをseigetsuから聞いて、そのことについては僕も最近色々考える機会があったから、「Still Dreaming」の歌詞はグロくてとてもいいなと思いました。seigetsuの歌詞には、『HOME EP』から明確な違いを感じていて。『HOME EP』は、表面的には「愛してる」が見えるように作られている気がしていて、『EP2』は「愛していた」というか、何かから離れていくこととか断絶みたいなものが印象的だった。単純にHOMEのメンバーの中でケンカしたり、あとは僕が妙な寂しさで狂ってた時期があったりして、僕の感情がソングライティングに反映されていたとも思います。 seigetsu:それを感じ取ってはいたかもしれないですね。 ―HOMEはすでに韓国、台湾、シンガポール、モンゴルからもライブに呼ばれていますけど、そもそも英語の歌詞が多いのは世界の人に届くように、といった意識ですか? seigetsu:最初は日本人がわからないように、と思って英語にしてました。もともと歌詞を書いていたわけじゃないので、最初は歌詞のない状態でライブしていて、英語風に歌っとけば大丈夫だと思って(笑)。でも最近はそれだと怒られるから、ちゃんと書くようになって、日本語が書けるようになりました。レベッカとかも通っているので、日本人の耳に聞き馴染みある曲は日本語が出てきます。本当は、日本語と英語を極力半々くらいにはしたいと思ってます。 shun:海外でやればやるほど、日本語で歌う方がいいなと思う。実をいうと僕は、むしろ日本語詞の方が海外にはウケる気がしてます。やっぱり英語は僕らのネイティブ言語ではないし、日本語に自分らの感覚が詰め込まれてる方がむしろいいんだろうなって。それこそフィッシュマンズとかゆらゆら帝国が評価されているのは、そういうところもあるんだろうし。 seigetsu:わかる。海外で日本語をやりたい。 ―今後、バンドとしてはどんなことを成し遂げたいと思っていますか? そもそも結成した頃から、こうやってメインストリームで活動したいという想いはありました? o-png:それは思ってました。 shun:今は自由にやりたいこともできているから、かなりいい状態にあると思います。でも全然満足しきってないですね。 o-png:この形態でやってる人がいないから、「やってるスポーツが違う」みたいな感覚で見られるところもあるんですよ。この形態のバンドが主流になったらいいなと思います。これが流行ったら、ようやく認められるんだろうなと思うから。 ―日本はバンド文化も根強かったりするから、ライブハウスで、ドラムがいない編成でお客さんにどう熱量を伝えるのかは大きな挑戦ですよね。ライブの作り方で意識していることはありますか? o-png:ドラマーに負けないように、というのはやっぱり強いかもしれないですね。 shun:バンドって、人が楽器を鳴らしているから、いつもと違う感じになったりミスが起きたりするわけじゃないですか。そこにバンドマジックみたいなものがある。最近はo-pngがシンセを弾くパートも増えたんですけど、HOMEはリズムやシンセがトラックで。そんな中でライブアクトとして何ができるかなと思ったときに、僕はバグを引き起こす存在でありたいと思いながらギターを弾いてます。ライブは我々が生きているということを刻みつけるものだと思ってますね。 ―seigetsuさんから見て、最近のバンドの状況についてはどうですか? seigetsu:(そっと親指を上げる)いい感じです。そろそろやりたいことと求められることの塩梅を考え出す時期なのかもしれないですけど、やりたい音楽をやるのが僕らの仕事なので。 shun:客が求めているものに僕らが反応するなんてナンセンスだと僕は思っていて。僕らが「これをかっこいいんだ」と信じているものを出していく。それに反応する人がちゃんといたら嬉しい。まずは我々が本当に満足できるものを作っていくことが最重要だと思ってます。僕らがやってることがどれだけ先鋭的で洗練されたものなのかもまだ伝わりきってないと思っているので、それを伝えきるまではやめられないです。「Still Dreaming」ということですね。 HOME 『HOME EP2』 配信中
Yukako Yajima