HOMEが語る、今を生きるバンドが考える「モダンポップス」
HOMEが考える「今の音」とは
―1st EP『HOME EP』を出したあと、2024年は『HOME EP2』にも収録されている3曲がシングルとしてリリースされました。前作からさらに音楽性の模索をした1年だったのだろうなと思うんですけど、どんなことを考えながら『EP2』の5曲を作っていたといえますか? shun:『EP2』に関しては、よりモダンなポップスとして聴けるものを作りたいというイメージが僕の中でかなり明確にありました。『HOME EP』はわりとノスタルジー的なところが強い作品だと僕は思っていて、それはそれで素晴らしいものだけど、やっぱり僕らはノスタルジーだけで生きてないというか、ちゃんと今を生きているバンドだと思うので。今の音で、なおかつポップソングである、というものを作ってみたいというのが『EP2』の構想でした。 ―打ち込みとオルタナティブロックの掛け合わせだとか、グローバルトレンドと共鳴している部分もありつつ、でもちゃんとオリジナリティがある。そういう音だなと感じるんですけど、HOMEは「今の音」というものを具体的にどのように捉えていますか? shun:まず音響的にモダンに聴けることを意識しました。具体的にいうと、前作よりリバーブをかなり減らして、要は音が面で存在する感じではなくて、点で配置するようにしました。逆にリバーブを増やすところは思いっきり増やして、メリハリがつくようにもしたり。特にドラムのリバーブをかなり減らしましたね。 ―シンセとギターがそれぞれ効果的に鳴るように、その2つの絡み方をうまくデザインすることも意識を新たにした部分があるんじゃないかなと思ったんですけど、そこはいかがですか? shun:そうですね。ギターでいうと今までよりも点で弾く部分と、逆に押し出す部分をわけました。前はもっと線っぽいものがずっと続いていくイメージだったんですけど、今作はよりミュートの効いたものがあったり、逆にシューゲイズとかオルタナにもっと寄った歪んだギターを今までのパッドの位置に配置したり、そういうところがかなり変化したと思います。シンセでいうと、今回はo-pngがかなり弾いてくれたりアレンジをやってくれたりして、彼の貢献度も高かったです。 ―o-pngさん的に特に手応えが強い曲は? o-png:「Tell Me」。さっきshunが言ったようなビートの鳴りもいちばんフィットしてる感じがします。後半はshunがシューゲイズとかの感じのギターを詰め込んでいたので、そこにシンセがうまく乗っかるように上の方でフレーズ弾いたんですけど、それがフィットしたなと思います。 shun:あの音色もいいよね。ポストハイパーポップ時代におけるシンセっぽい。「Tell Me」を作ったきっかけは、The Cure「Close To Me」を聴いたときに、1985年の曲なんですけどすごくポップで、音がミニマルで、現代的なふうに僕は感じて、それを今やることに意味があるなと思って。僕の好きなギターポップの要素を入れたり、リズムはかたくてモダンで、っていうバランスのものができあがって、最初のデモから手応えがありました。HOMEにおける新しいポップスの形がひとつできたなって思いましたね。 ―最初にshunさんが「Memories」を挙げてくれましたよね。多くの人はこれを聴くとどちらかというと懐かしさを感じるんじゃないかなと思うんですけど、これこそがトレンドで。HOMEがこの曲で意識したモダン感について、言葉にしてもらうとどうですか? しかもこれ、最初はseigetsuさんではない人が歌ってますよね? shun:今作の「モダンポップス集」というテーマの中でいえば、「Memories」と「Tell Me」の音が核だと思ってます。「Memories」は、去年10月に韓国へ遠征に行ったタイミングに作った曲で。ソウルの街中はいろんなところで音楽が鳴っていて、韓国のインディロックっぽいバンドの曲とか、あいみょんの曲も流れていたんですよ。そういう空気に触発されて、泊まっていた宿で1時間くらいで書き上げました。seigetsuの専売特許的なメロディがHOMEをHOMEたらしめていると思っているから、自分がHOMEでメロディを書く必要はそんなにないと思っているんですけど、「Memories」は僕がメロディもほぼ作っちゃって、リードボーカルを取ることになりました。1番とサビは僕が歌ってるんですけど、2番のAメロで急にTohjiみたいなやつが乱入してきた感じが欲しいなと思って、そこはseigetsuが歌ってます。だからフィーチャリングっぽいイメージですね。曲自体はインディロックで、究極をいえばPixiesみたいなものを打ち込みでできないかなという発想で、なおかつ、そこにフィーチャリングでラッパーが入ってくるようなイメージで作りました。 ―そもそも、普段どうやって曲が作ることが多いんですか? 基本、shunさんがトラックを作って、seigetsuさんがメロディと歌詞を書いてる? shun:僕の曲は、僕がスマホのGarageBandでデモを作って、それをo-pngのパソコンに移し替えて、みんなでセッションしながらトラックを変えてもらったり、僕もその場でギターを考えたり、seigetsuにメロディや歌詞を作ってもらったり、という感じで作ってます。『EP2』は僕主導の曲が多かったので、ほとんどその方法でした。 ―スマホのGarageBand!? shun:あ、そうです。僕、パソコンが全然できなくて。クレジットカードも持ってないような男なんで、何もわかんないんですよ。現代人としての条件が何ひとつ揃ってない(笑)。