「輪島のために」…大阪・花園でこだわった真っ向勝負「1年で一番、ワンチームになれた」
強く結んだ口元は、達成感に満ちているようだった。
昨年12月30日、大阪・花園で開かれた全国高校ラグビー大会の2回戦。試合に敗れた日本航空石川(石川)の上野魁心主将は「1年で一番、ワンチームになれた。地震が起きた時は、花園でここまでできると思っていなかった」と目を赤らめながら語った。
相手は優勝経験もある国学院久我山(東京)。日本航空石川の武器でもある留学生の突破を封じられ、接点でも上回られた。地力の差はあったが、それでも選手たちは力勝負にこだわった。
実ったのは前半19分。ゴール前の密集から何度もFWが体をぶつけ、この試合唯一のトライを挙げた。
昨年1月1日の能登半島地震で石川県輪島市にある校舎やグラウンドが被災し、他校の支援を受けながら岐阜や埼玉で合宿生活を繰り返した。昨年4月からは東京に拠点を置く。不慣れな環境を転々としながらも、FW戦を磨くことは続けてきた。上野主将は「こだわってきたFWでトライを取り切れたことは糧になる」と充実感をにじませた。
試合は5―32で敗れ、地震からちょうど1年を迎える元日の3回戦へは進めなかった。それでも「AS ONE 輪島(輪島は一つ)」と書かれたテーピングを巻いた選手は、「輪島のために」と声を掛け合いながら劣勢でも泥臭くタックルを続けた。
この試合には下級生7人も出場。上野主将は「後輩には、この悔しさを生かして(次の)1月1日を迎えてほしい」。元日にのびのびとプレーする姿を見せることが、輪島への何よりのエールになると信じている。(豊嶋茉莉)