野島氏監修の「明日ママ」 可視化された批判の声
過去にも「タブー」を扱ってきた野島作品
たしかに、施設の設定や職員の態度、冷たい里親の登場は、施設の改善や施設内虐待の防止に取り組んで来た児童福祉関係者の怒りを呼び起こすかもしれません。全国児童養護施設協会の藤野興一会長は21日の放送中止か表現の配慮を求めた会見で「これまでの努力に水を差すドラマ」と言っていました。 Yahoo!ニュース「個人」でも、元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクターで、法政大学教授の水島宏明氏が「『養子縁組の子ども』を育てる母親からのメッセージ」という記事で、当事者からのメールを紹介し、「あのドラマは中止して欲しい」と伝えています。こうした反響があったためか、第2話ではスポンサーの表示がありませんでした。 このドラマの監修が野島伸司氏です。野島氏と言えば、これまでも教師と生徒の恋愛、同性愛、強姦、性的虐待、自殺を盛り込んだ「高校教師」(TBS、1993年)や、知的障害者たちが工場で奴隷のような扱いをうける「聖者の行進」(TBS、1998年)などの問題作がありました。 とくに「聖者の行進」は暴力シーンなどで視聴者からの苦情があり、スポンサーを降りる会社もありました。「人間・失格~たとえばぼくらが死んだら」(TBS、1994年)では、いじめ自殺を扱っています。放送後、愛知県西尾市のいじめ自殺事件が起きたことでも、さらに話題を呼びました。
批判は織り込み済み?
こうして考えてみますと、野島作品は、タブーに切り込んだり、時代に食い込む作品が多いといえるでしょう。ときには盛り込みすぎたり、過剰な演出が問題になります。野島氏をドラマで起用するということは、こうした反響を引き受けるリスクを考えることになります。とはいえ、野島作品は抗議されても、これまで放送中止となったことはありません。 今回も、児童福祉団体や病院からの抗議に対して、日本テレビは放送中止の予定はありません。ドラマはあくまでも虚構。そして「泣けるドラマ」としての完成度をあげていくということなのでしょう。<野島作品というのはそんなもの>。局側がそう考えたとしても不思議ではありません。ただ、今回はネットの普及も手伝って、批判の声が可視化され、拡散しています。これだけ問題になったとすれば、<野島作品、初めての放送中止!!>もありえなくはないとでしょう。(渋井哲也=ライター)