「メンソレータム」のバズった“リップフォンデュ” 復活劇のウラに“深緑”への信頼
そんな同商品もコロナ禍では売り上げが落ち込み、一時は終売の危機に瀕していた。人々の唇がマスクの下に隠れてしまい、柔らかく溶け出すフォンデュのようなテクスチャーという強みが消滅してしまったのだ。ただジリジリと販売を縮小する中でも、愛用者からは継続を求める声が後を絶たなかった。「社内でも“リップフォンデュ”をなくしてはいけないのでは?という意見が広がり、コロナに負けるものか!と、辛抱強くシリーズを守り続けていました。そして再び艶リップやリップグロスの需要が高まったことを受けて、今こそ好機!とリニューアルに乗り出したのです」(多田律氏)。
安心・やさしさの“深緑”を改めて打ち出す
結果は大成功。しかし、リニューアル当時も「プランプ効果」「はやりの色展開」といった性能を備えた競合品はすでに市場にあったはずだ。その中でも“リップフォンデュ”が大ヒットできたのは、「メンソレータム」というブランドが培ってきた信頼がバックボーンにあったからだった。
「メンソレータム」は“リップフォンデュ”をリニューアルする以前の22年頃から、「安心・やさしさ」のイメージを改めて発信すべく、ブランドのシンボルである深緑色“メンソレータムグリーン”の打ち出しに力を入れてきた。商品のパッケージには必ずどこかに深緑を取り入れるようにし、ドラッグストアの販促物は深緑を前面に押し出したポップや什器に変更。テレビコマーシャルでも訴求した。「この色をひと目見るだけで『メンソレータム』というブランドや安心・安全なイメージを連想できるよう、訴求を徹底しました」(梅田かなは氏)。
その甲斐もあって、“リップフォンデュ”がリニューアルした際のSNSのコメント欄でも、使用する前から、「ティントだけど荒れなさそう」「信頼できる」といった好意的な投稿が多く寄せられた。そして、若者の間にも浸透しつつあった「安心・やさしさ」なイメージを、“リップフォンデュ”は使用感や効果効能でも裏切らなかった。