タワマン地獄にはまる配達員 1棟で4時間超えも「別料金もらいたい」
運よく空いていても、配送用の2トン車などが止められない場合もあり、路上駐車を余儀なくされることも日常茶飯事だ。駐車禁止で罰金を取られることも「まれではない」(大手宅配事業者の関係者)。駐車禁止の摘発を避けるためだけに助手席に補助者を乗せるケースもある。 ● タワマンを避ける配達員も こういった状況が常態化した背景には、宅配需要の急速な伸びがある。国土交通省によると、宅配便による荷物の取扱個数(トラック輸送)は2023年度に50億個弱と、10年前に比べて約13億個増えた。電子商取引(EC)の普及が背景にある。最近では、低価格で知られる中国系通販サイトのシーイン(SHEIN)やテム(Temu)なども台頭している。 さらに新型コロナウイルス禍を機にフードデリバリーやネットスーパーといった宅配サービスの利用も広がる。宅配ニーズが膨らんでいる消費スタイルの変化に、タワマンの設備や仕組みが追い付いていないという指摘もされ始めている。 フードデリバリーの配達員たちも困っている。 ウーバーイーツジャパン(東京・港)の黒崎花子シニアオペレーションマネージャーによると、あるケースでは、配達員が搬入口や事業者用のエレベーターを見つけられず、インターホンを押してから顧客宅に着くまで20分かかったという。建物内に宅配員向けのルールや業者搬入口の有無などが表示されておらず、迷ってしまったことが原因だ。 ウーバーイーツのアプリには、注文者が配達員の現在位置を確認する機能や、宅配の質を評価する機能がある。注文者がタワマンへの配達には時間がかかると知らなければ、建物に到着してから届くまでに時間がかかったことで低い評価を付けられかねない。1回の配達にかかるコスパ(費用対効果)が悪いと見られ、「タワマンは割に合わないと避ける配達員もいる」(黒崎氏)という。 都心では、今なお大規模なタワマンが次々と建設されている中、早めに手を打たなければ問題は深刻化しかねない。最近では「レジデンスオフィス」など、オフィスや商業施設とつながった複雑なマンションも増えている。「搬入口がオフィスと居住エリアで異なるなど、配達員にとってはよりハードルが高い」(宅配大手関係者)。 宅配の「陸の孤島」となれば、住民の暮らしやすさや資産価値にも影響を及ぼしかねない。どうしたら改善できるのか。