島田珠代「子どもや学生が、お笑い芸人の真似をするなとは言わない。でも、言葉や振る舞いは誰かを傷つけてしまうことがあるということは忘れずに」
「パンティーテックス」「男なんてシャボン玉」など唯一無二のギャグと独創的な動きで部人気の、新喜劇を支える看板女優・島田珠代さん。そんな芸歴36年になる島田さんが、幼少期から仕事、恋愛、自分らしさ、女として生きることなどを赤裸々に綴った初エッセイ『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』。今回はその中から、お笑いのプロとしての覚悟、お笑いとの向き合い方について語ったエピソードを紹介します。 【写真】芸歴が長くても、舞台を降りれば後悔の連続。という珠代さん * * * * * * * ◆芸事で生きていく 笑いは誰にでも生み出すことができる。それは確かにそうなのですが、私たち芸人は人を笑わせる《芸事》で生活をしています。何かを身につけるというのは時間や労力がかかるもので、それは「この仕事で生きていくぞ」と決めてから痛いくらいに実感しています。 しかし、お笑いはそういった苦労や努力を見せないのも仕事のうちです。だから、小さな子どもたちや学生さんには、当然「簡単に真似できる!」とか「これでクラスの人気者になれる!」と思われることも多々あります。 これは、お笑い芸人として嬉しいことでもあるのですが、その反面学校で起きるイジリを超えたイジメへと変化して学校に行けなくなってしまったり、最悪の場合命を奪ってしまうことさえあるのです。 特に、私の芸風が容姿イジリということもあり、そういうニュースを見るたびに心が痛くなります。 私の芸を見て救われたという人がいる一方で、追い詰められている子どもたちがいるのではないか。親である私が容姿イジリをされていたら、娘にもしていいとまわりの子どもたちは思わないだろうか。そんなことも頭をよぎります。
お笑いの舞台では、どんなに若手であっても細かいところまで考えていると思います。 こういうことを言ったら自分のボケに繋がりそう。 あの人と共演するならこのくらいふざけても拾ってもらえそう。 うまく拾ってもらえたらもう一回ボケてみるか。 頭の中でそんなことばっかり考えています。本番前には上手にできるか不安になって気持ち悪くなってしまう人もいるくらい。 だけど、私がまだ吉本に入る前、クラスでモノマネをしていただけの頃はそんな不安はまったくなかった。こうやって返せば笑いになったわ、と本気で落ち込むことは、仕事にするまで想像もしなかった。 私自身、お笑い芸人の真似から始まって今に繋がっているので、真似するなとは言いません。でも、言葉や振る舞いは誰かを傷つけてしまうことがあって、それもすべて自己責任だというのは忘れないでほしいです。
【関連記事】
- 島田珠代「些細なことで娘と大ゲンカ。作り置きした食事を食べなくなった。〈ママの役目も終わりなのね〉テーブルに置いたメモに、娘からの返事は」
- 島田珠代「夫のがんで、娘と離れて暮らした10年。携帯で、洗濯物に埋もれて放心している娘を見て泣いた日」
- 島田珠代「芸人になって初めての恋は、テレビ局のADさん。初デートはあき恵姉さん同伴で。《いい雰囲気》の彼の前から逃げ出した理由は」
- 島田珠代「内弁慶の人見知りから、クラスの《面白枠》へ転身のきっかけは、小2の書写での褒めちぎり。日常的にギャグを連発する父が大好きで」
- 吉本新喜劇の看板女優・未知やすえ「完治しない間質性肺炎と診断され、意識が変わった。時代も変わり、キレる相手は夫の内場勝則に」