新宿二丁目「白い部屋」移転問題に揺れるコンチママ、取材Dにこぼした「ごめんなさいね」…コロナ禍より大きかったダメージ
■「ずっと家にいたら絶対おかしくなる」 体力的な厳しさがある一方で、多くのキャストやスタッフを抱え、通ってくれる客もいる――この狭間で悩み続けたコンチママ。時には宮井Dに「何も決まらなくて、ごめんなさいね」と謝ることもあったそうで、「僕らにそんなこと言う必要なんて全くないのに、そんな言葉からも、関わってくれたいろんな人たちのために“この店をなくしちゃいけない”という強い思いを背負っているのが、ひしひしと伝わってきました」と振り返る。 店を続けたいという思いの背景には、自分の生きがいになっている部分もあると感じた。 「前編で真琴さんにオーナーママを引き継ぐ話をする時に“ずっと家にいたら絶対おかしくなる”と言っていましたが、その不安が強かったように感じます。たしかに疲れるけど、お店に出ていると生き生きできる。接客して人の輪に入るということを半世紀以上やってきたのが、それを辞めて広いご自宅でポツンと一人で暮らしていくことへのおそれが大きいのだと思いました」
多様化が叫ばれる中での二丁目の変化
18年の『切なさに生きて…2丁目』で、初めてテレビの取材を受けた「白い部屋」。当時は「ママやキャストが構えてしまったのもあって、あまり踏み込めなかった」という反省があったが、今回の取材は立ち退きの決定から始まり、真琴さんとの1対1の引き継ぎの相談の場面や、店のメンバーたちにオーナーママの交代を発表する場面まで撮影させてくれた。 そこまで宮井Dを信頼したのは、これまでの放送で自分たちの生き方が正しい形で伝わったこと、そして新規の客が増えたことへの感謝もあるようだ。 「それまであまり触れられてこなかった世界を見せて、番組の反響もネガティブなものばかりではなかったのを実感してもらったことで、信頼してもらえるようになったのではないかと思います」 一方で、店の移転先を探す中で、コンチママが「昔と変わったな」とつぶやく場面が何度もあったという。 「二丁目という街はもともとゲイタウン的な位置づけで“秘め事”をわかちあう場所だったのが、近年は多様性が叫ばれ、LGBTQの皆さんのカルチャーが開かれたものになっていく中で、ショーパブの持つある種の猥雑さが、世の中への受け入れられ方として変化しているのを感じていました」 ■辞められない、続けられない人が共感できる話 3日放送の「後編」では、オーナーママを受け継ぐことを一度は承諾した真琴さんの辞退という急展開から、「白い部屋」の移転問題が振り出しに。後継者がいない、移転先も見つからないという状況で、長年親しんだ場所での最後の営業日を迎えることになる。 宮井Dは「辞めようと思っても辞められない、続けようと思っても続けられない……自分の意思や周囲の環境に揺さぶられる中での人間の決断というものを、自分の今やっていることに重ね合わせながら見ていただきたいです。56年の歴史がある『白い部屋』と違いはあれど、どんな人にも辞められない、続けられない理由を抱えているものがあると思いますので」と呼びかけた。
中島優