「ケアリーバー」の若者が直面する”18歳の壁” 一時は死を意識し自暴自棄に…養護施設で「本当の家族」と夢見つけ進学した女性も
児童養護施設や里親家庭で育ち、進学や就職を機に施設などを離れた若者は「ケアリーバー」と呼ばれ、孤立や困窮に陥りやすい。こうした状況を解消するため、4月施行の改正児童福祉法では、ケアリーバーへの自立支援が強化された。つまずきや困りごとに直面したときに1人で抱え込まず、周囲の支えを受けながら少しずつ自立していけるためには―。模索する支援者と、当事者の思いから考える。(松沢佳苗) 【写真】「恵愛」が設けた退所生のための「ふるさと部屋」
仕事が続かない、虐待の影響も
「退所後、仕事を続けられない子が多い」。千曲市の児童養護施設「恵愛」で自立支援を担当する鎌倉昌弘さん(44)はこう話す。施設に入所する児童の中には、虐待の影響などにより精神医療を受ける子が少なくないという。通院を続けながら自活し、仕事を続けるのは容易ではない。
しかし、仕事を辞めてしまえば生活はたちまち行き詰まる。戻れる実家がない状況で、住み込みや社員寮の場合には住まいも失う。施設長の福原隆和さん(42)は「親に頼れない若者が、施設を出た瞬間にすべて自分でやっていかなければいけないのは、経済的にも精神的にもあまりに負担が大きい」と話す。こうした状況は「18歳の壁」と呼ばれている。
状況を改善するため、国は児童養護施設が退所者に継続的に関わり自立を支援する「アフターケア事業」を進めてきた。県内では現在、15施設中8施設にアフターケアを担う自立支援担当職員が配置されている。
恵愛は鎌倉さんを中心に、退所者と定期的に連絡を取り、退所から10年間を目安に自立をサポートしている。必要に応じて別の機関につなげたり、生活保護の申請手続きに同行したりすることもある。
自立の過程で、仕事やお金はつまずきの引き金になりがちだ。長野市の児童養護施設「三帰寮」の自立支援担当、荒井俊樹さん(45)によると、退所後の状況は、借金を抱えて自己破産した人、仕事がうまくいかずお金がなくなって施設に数カ月帰ってきていた人、新たに始めた仕事の内容が「(職員に)顔向けできない」と連絡を絶ってしまった人などさまざまだ。