「ケアリーバー」の若者が直面する”18歳の壁” 一時は死を意識し自暴自棄に…養護施設で「本当の家族」と夢見つけ進学した女性も
満たされない気持ちがお金に
入所児童のおよそ半数に発達障害、精神障害、知的障害のいずれかがあり、欲求のコントロールが苦手な子も少なくない。給料などまとまった金額を手にするとすぐに使い切ってしまう場合には、退所後も施設側が金銭管理を行い、本人には毎月生活費を渡すこともある。
手っ取り早く稼ぐため日雇いや風俗で働き出す人もいる。リスクを伝え、いつでも相談できる態勢は用意した上で本人の判断を見守る。「親の愛に満たされなかった気持ちをお金で埋めようとする面もあると思う」(荒井さん)
過去の経験が先の見えなさに
退所後に就職ではなく、進学を選ぶ若者もいる。しかし、ケアリーバーの進学率は低い。県児童相談・養育支援室によると、県全体の進学率は例年75%ほどなのに対し、2023年度のケアリーバーの進学率は39%だった。
同室によると、ケアリーバーは子どもの頃に親や家族から引き離され、養育途中で別の施設や里親に移る場合や、同じ施設に暮らしていても接する職員が入れ替わることがある。こうした愛着関係が「ぶつ切り」になってきた過去の経験は、「今の生活がいつ終わるか分からない」という感覚を引き起こし、先を見通して将来を考えるのが難しくなる。進学率の低さには、金銭面だけでなくこうした「先の見えなさ」も影響しているとみられる。
自分と同じ境遇の子に寄り添いたい
こうした現状の中、自分の夢に向かって進学を決意した退所者もいる。桜さん(19)=仮名=は今春、三帰寮を退所し、保育士資格取得のために進学した。幼少期からの児童手当の積立金とバイト代に加え、給付型奨学金や国や県の補助金を活用し、学費や生活費を捻出。児童養護施設の支援員になり、自分と同じ虐待経験を持つ子に寄り添うことが夢だ。
桜さんは小学1年のとき、母親のネグレクト(育児放棄)と兄の家庭内暴力が原因で、姉、妹と共に児童相談所に保護された。里親の養育を受けたが、高校時代、里親との関係が悪化。高2の夏、自ら希望して三帰寮に移った。一時は死を意識するほど自暴自棄になっていたが、三帰寮では「本当の家族」と思える人間関係を築き、次第に「自分も支援員に」との夢が芽生えた。