なぜドイツには「孤独だと嘆く老人」がいないのか…死の瞬間まで「幸せでいられる高齢者」3つの共通点
■降圧剤と血圧測定をやめてしまった理由 家族のいる人は「こどもや配偶者がいるから寂しくない」と思っているかもしれないけれど、今の子は親の面倒なんか見る気はないし、配偶者もいずれ亡くなる。そうしたら誰でもひとりぼっちです。 だからいまのうちから、一人で生きていく力をつけておいたほうがいい。私も本当のひとりぼっちだけれど、もう大丈夫。むしろ一人は誰にも邪魔されず好きなように生きられて最高です。まだ不安な人は、強い心をつくりましょう。具体的には本を読んで勉強することです。ジャンルでいえば、「生き方本」でしょうか。ポピュラーな人でいえば五木寛之さんや和田秀樹さんの本などです。古今東西の哲学者が書いた本もいいでしょう。幅広くいろいろなものを読んでください。そして感動したワンセンテンスと出合ったら、ノートに書き写しておく。落ち込んだときはノートを開き、声に出して読む。この方法はみなさんにもおすすめします。赤線を引いておいても、本を閉じたら忘れてしまいますから。 私は仏教やキリスト教の本も読み、講座にも行ってみました。宗教の「いいとこどり」ですが、生き方の勉強になることは確かです。 健康については、私は「神様にお任せ」と思っています。実は母がホームに入ったりしていろいろ大変だったころ、上の血圧が180を超えて、パニックになってしまったのです。それまで私は検査もしないし薬も飲まない主義でしたが、さすがに不安で病院に行ったら、やはり降圧剤を処方されました。そして毎日血圧を測って薬を飲んでいるうちに、ますます具合が悪くなってしまったのです。なにしろちょっと血圧が上がっただけで、不安で不安で仕方がない。迷った末に、薬を飲んだり血圧を測ったりするのをやめました。なぜなら私はこどももいないし、そもそも長生きをしたいと思っていないわけだから、「神様にお任せ」という原点に帰ろうと思ったのです。 結局、人間はおぎゃあと生まれたときから背中に孤独というものを背負っているのです。若いときは気づかないけれど、老いて、知り合いが一人二人と亡くなり、親しい人が亡くなると否応なしにそれに気づく。孤独を背中から引きはがすことはできません。誰もが孤独とともに生きていくしかない。 私は若いころに2人の人生の師と出会い、心の支えになってもらいました。その方々も鬼籍に入られて、いまは私が先輩の立場に。私がしっかりしないと後輩も将来に希望を持てない。そう思うと、しょぼくれてなんかいられません。いまは一人暮らしの高齢者がどこまで元気で暮らせるか、自分の身をもって実験しているところです。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月18日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 松原 惇子(まつばら・じゅんこ) 作家 ノンフィクション作家。1947年生まれ。おひとりさまの終活を応援するNPO法人SSSネットワーク代表。流行語にもなったベストセラー『クロワッサン症候群』(文藝春秋)のほか、『70歳からの手ぶら暮らし』(SBクリエイティブ)など著書多数。 ----------
作家 松原 惇子 構成=長山清子 撮影=初沢亜利