「打ち合わせに遅刻」あまりに残念な謝罪の一言 相手の立場に立ち、何を求めているかを考える
では、この会見の何が問題だったのでしょうか。実は、これらの会見には、謝罪が逆効果となる要素が含まれていたのです。 スタンフォード大学の研究によれば、次の4つの要素のいずれかが含まれていると、謝罪は逆効果になります。 ① 正当化 ② 逆切れ ③ 弁解 ④ 矮小化 こうした観点で見ると、同社の社長が行った対応や会見には、これらの要素のうち3点が含まれています。 たとえば④の矮小化は、問題や状況を小さく見せようとすることですが、最初に「日本に出荷された証拠がない」と、問題を小さくしようとしました。
②の逆切れは、自らは被害者であるとして他者を非難することです。会見で「私たちは被害者だ」と述べています。 ①の正当化は、「わざとではない」「知らなかった」などのように自身の行動や発言には、そうするだけの理由があったとすることです。この会見では、社長が会見しないことを「出張中のため」と正当化しようとしました。 他にも多くの「失敗した謝罪会見」がありますが、それらには、この4つの要素のいずれかが含まれています。逆にいえば、これらの要素を含まないように配慮して謝れば、謝罪が逆効果になることはありません。
ただし、これら4つの要素を含まなければ、そのまま問題なく謝罪が受け入れられる、というわけではありません。自身の行いを詫びるだけでは、誠意が伝わる謝罪になりません。そもそも、多くの人は謝罪の言葉を求めているわけではないのです。 アメリカで行われた心理学の実験で、6歳くらいの子どもが、4種類の謝罪の仕方に対してどのように感じるかが調べられました。 実験では、子どもは実験協力者の大人と並んで座り、赤色と青色のカップを交互に積んでタワーを完成させるという課題に取り組みました。タワーの完成が間近になったところで、隣の大人が「うっかり」タワーを倒しました。
このときに、子どもたちはタワーを倒した大人から、次の4種類のいずれかの対応を受けました。 ①すぐに「ごめん」と謝る ②実験協力者が促してようやく「ごめん」と謝る ③子どもがやり直すのを手伝う ④何も言わない これらの対応に対する満足度と許容度を子どもに点数で答えさせたところ③補償の申し出、①自発的な謝罪、②促されての謝罪、④謝罪なしの順で高く評価しましたが、許容可能だったのは③補償の申し出だけで、ほかの3つはどれも低い点数でした。