「時間がかかってもオーディエンスとの信頼を強め、『ファン』を増やす」: 神戸新聞社 大町 聡 氏
2023年はAIの年だった、と言っても過言ではないだろう。この新しいテクノロジーの出現と急速な発展は、拡大と変化と混乱が相まって形作られている、デジタル領域を象徴するような存在にも感じられる。 一方で、デジタルの未来は不透明だ。市場におけるすべてのプレイヤーが、先の見えないなかでいかに足場を固め、次のステップへと進めるのか模索を続けている。DIGIDAY[日本版]恒例の年末年始企画「IN/OUT 2024」では、 DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブや次世代リーダーに2023年を振り返ってもらい、2024年に向けてどのようなチャレンジを企図し、次なる成長を実現しようとしているのか伺った。 株式会社神戸新聞社にて、常務取締役(DX、デジタル事業担当)を務める大町聡氏の回答は以下のとおりだ。
──2023年に挙げたもっとも大きな成果はなんですか。
日本新聞協会が年1回、優れた報道の担い手に贈る新聞協会賞のニュース部門で、神戸新聞社「失われた記録」取材班の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」が選ばれました。社会を揺るがせた少年事件の記録が全廃棄されていたスクープに端を発し、各地で国民の共有財産といえる裁判記録が機械的に廃棄されていたことが明らかとなったのです。 事件は1997年のできごとであり、廃棄した裁判所も当初の反応は鈍かったそうです。社会課題を定点観測で追い続ける地方紙だからこその問題意識が全国的なニュースとなり、記録保存の方針に改められました。 7月に、コンテンツ、サービスともに刷新した電子版「神戸新聞NEXT」は、プレミアム記事に加えて市区町ごとの出来事をWEBやニュースメールでお届けしています。紙の新聞を購読されない方に向けて、新たに有料記事の一部を無料で読めるコースや廉価版のバリューコースを設定しました。地域ジャーナリズムの役割を将来も果たし続けるために、デジタル読者の拡大に取り組んだ1年でした。