睡眠は「脳の誕生」以前から存在していた…なぜ生物は眠るのか「その知られざる理由」
「眠りの起源」をたどる旅
複雑な現象を前にしたとき、私たちは常にその起源に立ち返らねばならない。次々と新しい技術が生み出される現代だからこそ、原点から本質を見抜くことがより一層重要なのではないだろうか。睡眠とは何か、なぜ私たちは眠るのか――。ヒドラが教えてくれたのは、眠りの起源は6億年以上前に遡り、睡眠は必ずしも脳に付随する現象ではないということだ。そして、脳がある場合でも無い場合でも、睡眠を調節するメカニズムは共通しているのである。 果たして、睡眠の最小構成要素は何であろうか。興味深いことに、実験室で神経細胞の集団を培養すると、眠っているときの脳に似た電気活動が観察される。どれくらいの数の神経細胞が集まれば睡眠が生じるのかなど、興味は尽きない。眠りの起源を解明する挑戦はまだ始まったばかりである。
金谷 啓之