「日ハム→MLB→ソフトバンク」はプロとして当然の選択…上沢投手の移籍を非難する人に欠けている視点
■野茂英雄が選んだ「任意引退」と違う DeNAからポスティングシステムでMLBのレイズに移籍した筒香嘉智は、5年間メジャー、マイナーでプレーをしたのち、今年4月にDeNAに復帰した。筒香にも他球団が食指が動いたようだが、筒香は古巣のチームを選択した。このことはDeNAのファンなどによって賞賛された。 今の制度的には上沢のソフトバンク移籍は全く問題がない。ポスティング移籍が決まった時点で上沢は日本ハムを「自由契約」になっていた。そして今オフには所属していたレッドソックスを「FA」になった。この時点で、彼がどのチームと契約を結ぼうと全く自由だ。 今から30年前、野茂英雄が近鉄からドジャースに移籍した際には、野茂は「任意引退」のステイタスでアメリカに渡った。この場合、もし野茂がNPBに復帰しようとする際には近鉄以外と契約することはできない。 野茂の後から多くのNPB選手がMLBに挑戦した。彼らの中にはNPBに復帰した選手もたくさんいたが、「任意引退」の身分の野茂だけはNPB復帰は難しかったのだ。 制度上は問題がなくても、上沢に対しては「育ててもらった球団の恩を忘れているのではないか」「マイナー契約だったからポスティングフィーも雀の涙だったのに、ライバルチームに移籍するなんて」などという声が上がっている。心情的にはわかるが、これらは狭量な声だと思うし、プロアスリートのライフスタイルを理解していないと思う。 ■条件の良い球団に行ったまで 上沢はNPB復帰を考えるにあたって、最初に古巣・日本ハムに連絡していたはずだ。日本ハムとしても、前年までの主戦級投手が復帰するのは歓迎すべき話だから早速、条件提示をした。しかし、その提示は日本ハムの「予算内」の提示だった。 その条件に不満があったかどうかはわからないが、上沢は日本ハムの提示を上回る4年総額10億円規模(※)というオファーをしたソフトバンクと契約することにしたわけだ。 ※ スポニチ(12月16日配信記事)「ソフトバンクが上沢直之獲得!4年総額10億円規模の好条件で日本ハムとの争奪戦制す 近日正式発表」 日本ハムが上沢に、ソフトバンクの提示を上回る条件を提示しなかったのは、それが球団の方針だからだ。日本ハムはもともと「去る者は追わず」で、過去にも多くの主力選手をMLBやNPBの他球団に送り出してきた。 MLBには、ダルビッシュ有(→レンジャーズ)、大谷翔平(→エンゼルス)、NPBには小笠原道大(→巨人)、糸井嘉男(→オリックス)、陽岱鋼(→巨人)、近藤健介(→ソフトバンク)。 MLB経由ではあるが、有原航平や今回の上沢も同様だ。 日本ハムは契約金を吊り上げる「銭闘」には加わらない。誠意ある金額提示はするが、それ以上の条件提示があればあっさり引き下がるのだ。