「日ハム→MLB→ソフトバンク」はプロとして当然の選択…上沢投手の移籍を非難する人に欠けている視点
■日ハムとソフトバンクの大きな違い その代わり日本ハムは次々と、新たなスター選手を輩出してきた。「育成力」で、主力選手が抜けた穴を次々と埋めるのが、日本ハムの方針であり、チームとしての矜持だったのだ。 有原航平や上沢直之が抜けても、日本ハムは伊藤大海、加藤貴之など、優秀な先発陣が育ってきている。2024年シーズンは、オリックスから山﨑福也も加わった。 上沢直之との契約に固執しなかったのは、そうした背景があるのだ。それが日本ハムという球団のポリシーだと言っても良い。 一方で、ソフトバンクは、1軍から4軍まで多くの選手を抱え、MLB球団のような陣容を誇っている。 孫正義オーナーはホークスを買収した時に「MLBに追いつく」という目標を持っていたとされるが、他の追随を許さない分厚いファームシステムで自前の強豪選手を輩出するとともに、潤沢な予算で他球団の主力選手も獲得している。 今年のレギュラー陣でいえば、先発投手では生え抜きの坂東、大関などにキューバ国籍のモイネロ、元日本ハム→MLBを経て入団した有原。救援では元メジャーリーガーのオスナ、ヘルナンデスに、中日から移籍した又吉克樹、広島→独立リーグ高知を経由した藤井。野手では生え抜きの柳田悠岐、栗原陵矢、中村晃らに、日本ハムから獲得した近藤健介、元西武の山川穂高などなど……。 ■プロ野球選手は会社員でも弟子でもない ソフトバンクは圧倒的な資金力で育成も補強も行い、パ・リーグ随一、NPB屈指の強豪チームになっているのだ。それでもオリックスに昨年までリーグ3連覇を許すなど「資金力必ずしも勝利に直結せず」な部分が野球の面白いところではあるが。 ともあれ、ソフトバンクはそういう方針のチームだということだ。 選手は会社員ではないし、徒弟制度で師匠の下に入門した弟子でもない。入団した瞬間から個人事業主であり、契約上の制約は受けるにしても、最終的には自身の意志で、より有利な条件の球団に移籍する権利を有している。 それを行使したからといって、非難される筋合いは全くない。トップアスリートが市場の原理で動くのは、至極健全なことだと言える。 また、ポスティングでMLBに移籍して1年でNPBに復帰して他球団に入るのは、FAルールの裏をかくものだ、という見方がある。だが、上沢がそれを意図してポスティング申請したわけではないことは明白だ。