Jリーグ 広島・佐藤寿人が隠れた大記録を継続
丸4年、127試合”カードなし”
横浜F・マリノス、浦和レッズと熾烈な優勝争いをしているサンフレッチェ広島のエース、FW佐藤寿人が隠れた大記録を継続中だ。リーグ戦において127試合連続、時間にして1万683分にわたって、レッドカードはおろかイエローカードとも無縁のプレースタイルを貫いている。現時点で最後にイエローカードをもらったのが2009年10月25日の川崎フロンターレ戦の後半36分だから、ホームにベガルタ仙台を迎える26日の第30節でちょうど4年の節目を迎えることになる。 さかのぼること2006年から2009年にかけても、佐藤は84試合連続、7355分間にわたって同様の記録を残している。公式記録として残っているものではないので他との比較はできないが、Jリーグ史上で最もフェアプレー精神を実践している選手と言っても、異論を唱える者は誰もいないだろう。
イライラもするが自分をコントロールする
170cm、69kgと決してサイズに恵まれていない佐藤は、自身よりも屈強で大柄なディフェンダーたちが死守するゴール前、それもニアサイドの超危険地帯へ臆することなく飛び込むプレースタイルでゴールを積み重ねてきた。J2時代を含めた通算184ゴールは、すでに歴代1位にランクされている。 当然ながら、相手DFの厳しいマークに遭う。ときにはファウルで削られるし、ピッチに転がされることもある。それでも、佐藤は「熱くなっても感情的にはならない」というポリシーを自らに言い聞かせ、カードの対象となるプレーや行為と常に一線を画してきた。 「もちろんイライラもするし、何クソと思うこともありますよ。それでもFWがやり返すことは絶対に許されない。自分の中でコントロールしないといけないんですけど、ストレスを自分の中に溜め続けるのではなく、正当なプレーで返すんだ、というエネルギーに変えますね。僕はFWなので、ゴールで返すのが一番。どうだ、という感じでね(笑)」
ストライカーは出場停止処分を受けてはいけない
ターニングポイントとなった試合がある。 ちょうど7年前の2006年10月22日。J1残留を争っていたセレッソ大阪との大一番に、佐藤の姿はなかった。前節のFC東京戦で遅延行為による通算4枚目のイエローカードをもらい、現時点では唯一となる累積警告による出場停止処分を受けていたからだ。 結果は2対4の完敗。敵地・長居スタジアムで必死に戦うチームメイトを広島市内の自宅でテレビ越しに応援しながら、佐藤はある決意を固めている。 「DFや中盤の選手がチームを救うために、ピンチを防ぐためにファウルを犯すことはある。でも、僕の場合は審判への異議にしろ、遅延行為にしろ、反スポーツ的行為にしろ、すべてが不必要。ファウルの次元が違ったんです。ストライカーはイエローカードをもらうようなファウルをしてはいけない、出場停止処分を受けてはいけないと」 以来、常に相手をリスペクトしてきた。審判団を含めて、一緒にサッカーの試合を作り上げていく仲間として位置つけてきた。オフサイドの微妙な判定に疑問と不満を募らせることもあるが、そのたびに佐藤は自身やチームメイトにこう言い聞かせている。 「審判も人間なので変に言われても、いい気持ちはしないし、こちらが言ったところで何も返ってこない。だったら、気持ちよくプレーしたほうがいい」