鳥の保護やバードウォッチングにAIアプリが大活躍、6000種を超える鳴き声を識別
AIの落とし穴
しかし、AIを用いたほとんどの技術と同様に、これらのアプリにも落とし穴がある。 2023年2月に学術誌「International Journal of Avian Science」に発表された研究で、スペイン、アリカンテ大学の生態学者のクリスチャン・ペレス・グラナドス氏はBirdNETに関する様々な科学文献を再評価した。この研究により、BirdNETは時に別の種の鳴き声と誤認することがあり、その結果「偽陽性」が生じることがわかったと、ペレス・グラナドス氏は言う。 また、Merlinのユーザーからも誤認の事例が報告されている。全米オーデュボン協会などの団体によると、市民科学のデータを取り入れた研究プロジェクトに悪影響を及ぼす可能性があるという。「BirdNETなどのソフトウェアは、ここ2、3年で大きな変化をもたらしましたが、今後も成長と改善を続ける必要があります」とペレス・グラナドス氏は言う。 「BirdNETなどのソフトウェアは、ここ2、3年で大きな変化をもたらしましたが、今後も成長と改善を続ける必要があります」とペレス・グラナドス氏は言う。 こうしたリスクを減らす方法はいくつかある。例えば、統計モデルを用いて不確実性を考慮したり、識別結果を手作業で再確認したりすることだ。後者は現在、ウッド氏のニシアメリカフクロウの研究で行われている。 確認が済むまでは「予測として扱う必要があります」とウッド氏は言う。「少なくとも以前は全く得られなかった鳥の群れのデータが得られたということですから、こうした誤分類の問題があっても嬉しいです」 実際、何百万人もの市民科学者がMerlinやBirdNETなどのアプリに膨大な量のデータを提供している。2022年6月に学術誌「PLOS BIOLOGY」に掲載された研究で、ウッド氏らの研究チームはBirdNETに投稿されたデータの精度を評価し、そのデータから北米とヨーロッパのいくつかの鳥の既知の渡りルートを正確に再現できることを確認した。