「そりゃやる気なくすわ…」社員の心を折る「営業プロセス管理」の4つの弊害
世の中のニーズが多様化する昨今、売上目標という数字にばかり囚われマニュアルをなぞるような営業スタイルのままでは、市場の実態を見落としてしまうし、顧客を満足させることだってできない。野村総合研究所のトップコンサルタントであり、自身もかつて営業を経験した著者が教える「営業プロセスの4つの弊害」とは――。本稿は、青嶋 稔『売上目標を捨てよう』(インターナショナル新書、集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 主語が「売る側」の 営業プロセスは時代遅れ 営業を行っている会社が取り入れている典型的な管理手法に、「営業プロセス」の管理がある。「営業プロセス」とは、初回訪問から、見込み化、提案、クロージング(契約締結)、納入、フォローアップといった、営業活動の過程・工程(プロセス)全体の流れを指す。この流れ全体を管理するのが営業プロセス管理だ。営業プロセス全体を一本のパイプラインに見立て「パイプライン管理」とも呼ばれる。 これは多くの営業部門で行われている手法だが、主語は常に売る側にある。その結果、顧客と対話していても常に自社中心的な会話となる。一昔前の、製品をプッシュ型で販売する時代には、このような管理手法は機能していた。だが顧客のニーズは大きく変化しており、今や時代と合致しなくなっている。 本文では、まず営業プロセス管理の弊害について述べてみたい。筆者が考える弊害は大きく4つに絞られる。1:顧客視点が弱くなる、2:購入後の議論が乏しい、3:営業担当者の知見が他部門に共有されない、4:営業担当者のやりがいが起きにくい、という4つの点だ。 ● 数字だけで市場を俯瞰できないと 顧客視点が弱いままになる 1:顧客視点が弱くなる 営業プロセス管理は結局、今月いくら売れるのかという数字の管理になりやすい。その結果、「市場や顧客にどのようなことが起きているのか」という議論にフォーカスがあたりにくくなる。主語は常に自社であり、顧客ではない。営業プロセスの議論を積み上げていっても、顧客に対する理解は深まらず、顧客視点は弱いままだ。 営業プロセス管理では、進捗が速いほどいいとされ、入り口が多いほどいいとされる。なるべく見込み客を増やし、なるべく速くプロセスを進め、提案、クロージングに持っていくことがいいとされる。こうした自社都合で議論をしていると、どうしても顧客の変化が見えなくなるし、顧客の変化に対する議論に十分な時間を割きにくい。