学識の高さで大きく出世した高階貴子
6月2日(日)放送の『光る君へ』第22回「越前の出会い」では、父・藤原為時(ふじわらのためとき/岸谷五朗)に付き添い、越前にやってきたまひろ(のちの紫式部/むらさきしきぶ/吉高由里子)の様子が描かれた。父が宋人の対応に追われるなか、まひろは越前で宋人・周明(ヂョウミン/松下洸平)と出会い、不思議に心が惹かれるのだった。 ■越前で繰り広げられる不可解な対応 越前守に任じられた藤原為時は、越前国府に向かう前に、宋人たちの集う松原客館に立ち寄る。彼らは船が壊れて帰国できないと訴えた。前の国守に船の修理を依頼したものの、まだ出来上がらないという。 それを受け、越前国府に到着した為時は、現地の役人である源光雅(みなもとのみつまさ/玉置孝匡)に船の修理の進捗を尋ねた。しかし、光雅は明確に答えることはせず、それどころか為時に深入りしないよう、賄賂まで渡そうとする始末だった。賄賂を拒んだ為時に対し、光雅らは仕事に協力しないことで反発。徐々に為時を追い詰めていった。 そんななか、宋人の代表である朱仁聡(ヂュレンツォン/浩歌)に、通事の三国若麻呂(みくにのわかまろ/安井順平)殺害の容疑がかかる。外交問題に発展しかねない大事件を前に、為時は対応の判断を仰ごうと左大臣・藤原道長(みちなが/柄本佑)に手紙を送る。 一方、京では藤原定子(高畑充希)の懐妊が発覚。定子のもとに会いに行こうとうろたえる一条天皇(塩野瑛久)をいさめたり、配流先から密かに藤原伊周(三浦翔平)が入京したりするなど、道長は度重なる諸問題に頭を抱えていた。 その頃、越前国府には、朱の無実を訴えるため、薬師の周明が証人を連れてやってくる。流暢な日本語を話す様子を見て、周を宋人だと思い込んでいたまひろたちは言葉を失ったのだった。 ■子どもたちに受け継がれた高い教養 高階貴子(たかしなのきし/たかこ)は、式部大輔従二位・高階成忠(なりただ)の娘として生まれた。生年は不詳。生母についても分かっていない。父も祖父も学者として朝廷に仕えた家系であり、貴子も幼い頃から高い教養を身に着けていたようだ。 身分の高い家柄ではなかったが、学識の高さが目に留まり、やがて貴子は内侍として円融(えんゆう)天皇に仕える立場となった。女性でありながら漢字を良く用いたことが抜擢の理由だという(『栄花物語』)。当時、漢字を中心とした学問は男性が主流だった。女性ながらも漢字の扱いに長けた貴子に、貴族社会が一目置いたということのようだ。 彼女の才媛ぶりがまたたく間に宮中に広がり、従三位にまで昇ったというから、当時の宮中がいかに、和歌や詩、漢文といった学識の深さによって出世が左右される社会であったかということがうかがえる。