米大統領TV討論会で明確な勝者はいなかったか:討論中にドル円は一時161円台
討論会の開催中に1ドル161円:日本政府は為替介入のタイミングを見計らう
TV討論会が行われる中、緩やかではあるがドル高円安が進み、一時1ドル161円台前半と1986年12月以来の安値が更新された。足もとの円安進行は、4月末から5月初めにかけての日本政府による為替介入の効果が、時間の経過とともに次第に減衰したことで生じた面が大きいと思われる。 また、TV討論会が開かれる中、日本では神田財務官の退任の報道が流れたが、為替市場にはほとんど影響しなかった。 米国財務省は日本政府による為替介入をけん制しているが、円安が物価高懸念を高め、個人消費の逆風になっていることから、そうした国内事情を優先させて、政府が為替介入を実施する可能性は高いと見たい。節目の1ドル160円を超えて円安が進んだ以上、短期間で円安の動きが強まる局面を捉えて、政府は為替介入に踏み切るだろう。いずれは、1ドル165円を巡る当局と市場の攻防になることが予想される。当局はこの水準を何とか守ることができるのではないかと、現状では考えたい。 目先の円安の動きに歯止めをかけるのは為替介入、短期的に円安のピークを生み出すのはFRBの利下げ観測の高まり、中期的に円安修正を進める原動力となるのは、日本銀行の金融政策の正常化と物価上昇懸念の後退と整理できるだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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