米大統領TV討論会で明確な勝者はいなかったか:討論中にドル円は一時161円台
議論が深まらないまま終了
外交問題では、トランプ前大統領は、バイデン政権の対アフガニスタン政策の失敗で米国が弱みを見せたことが、プーチン大統領のウクライナ侵攻を促すことになった、とバイデン大統領を批判した。さらに、ウクライナに巨額の軍事支援を行っていることを強く批判した。トランプ前大統領は、自身が再選されれば「ウクライナ戦争を止めてやる」と豪語した。 バイデン大統領は、ウクライナがロシアの支配下に置かれれば、次はハンガリーやポーランドが標的になると、ウクライナ支援を正当化した。そのうえで、トランプ前大統領が、ロシアの行動をけしかけるような発言を過去にしたこと、NATO離脱を口にしたことなどを批判した。また、トランプ前大統領は、北朝鮮の金正恩総書記やロシアのプーチン大統領にラブコールを送っていると述べた。 司会者は、トランプ前大統領には国会襲撃事件、訴訟問題、バイデン大統領には高齢問題と、それぞれ不利になるテーマで質問を投げかけたが、両者ともにそれらをかわし、議論は深まらなかった。
金融市場の反応は限定的
金融市場が強い関心を抱く、対中貿易政策、輸入関税策などについての議論は限られた。また、トランプ前大統領のドル安政策や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に大統領が介入できるようにする法改正などについては、全く議論されなかった。金融市場を大きく動かす材料は提供されなかったのである。 そして今回のTV討論会では両者に明確な優劣は付かなかったように思われ、それも金融市場の反応を限定的にさせただろう。討論会が行われる中、為替は幾分ドル高に振れたが、それも大きな変化とはならなかった。米国株先物価格もほぼ動かなかった。 討論会を主催したCNNの調査によると、討論会ウォッチャーの67%が、トランプ前大統領が勝利したと回答しているという。ただし、FRBの金融政策に介入することや減税継続で財政を一段と悪化させることを通じて通貨価値を損ねる可能性があるトランプ前大統領が有利となれば、為替市場はドル安円高に反応しやすいように思う。実際には為替が大きく動かなかったのは、TV討論会での勝者は明確にならなかったと市場は考えたのではないか。