神木隆之介の演じ分け、恐るべし…端島閉山から50年、『海に眠るダイヤモンド』が描いた人のつながりの奇跡とは? 考察&評価
朝子の「夫」の深い言葉
もしリナが現れなければ、もし進平が死ななければ、鉄平と朝子は結ばれ、閉山まで幸せに暮らしただろうか。 朝子の夫となった虎次郎役の前原瑞樹は、Xで、神木隆之介とのオフ写真をアップし、こんなコメントを添えている。 「海に眠るダイヤモンド、ありがとうございました! 本当にこのような素敵な作品に参加できて幸せです。これまでもこれからも、いくつもの世界線があったしあるんだと思います。だからこそ今を大切に生きていきたいですね。これは鉄平と虎次郎が仲良しになった世界線の写真です。」 本当にそうだ。いくつもの「もしも」があり、それが絡み合い、人は生きているのだとしみじみ思う。前原瑞樹は『厨房のありす』(2024、日本テレビ系)のいじめっ子、三國谷のイメージが強かったので、今回も用心したが、最後まで愛されキャラだった。朝子を幸せにしてくれてありがとう、虎さん…!
軍艦島閉山から50年
さて、実際の端島は1974年1月15日に閉山式が行われ、同年の4月には全島民が立ち退き、しばらくは無人となった。その後は安全面を考慮し、一般人は立ち入り禁止に。 見学経路が作られ、一部エリアに限り見学可能となったのはかなり後で、2009年からだ。ドラマの鉄平と朝子のように、端島にも大きな空白期間があったのだ。 2015年には、国際記念物遺跡会議(イコモス)により、端島を構成遺産に含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の1つとして、世界文化遺産になった。 そして2024年、端島閉山から50年目に生まれたこの物語。たった9回なのに、とても長い間、島の歴史を見た気分だった。 「私の人生、どがんでしたか?」 朝子の笑顔が消えては浮かぶ。 【著者プロフィール:田中稲】 ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
田中稲