神木隆之介の演じ分け、恐るべし…端島閉山から50年、『海に眠るダイヤモンド』が描いた人のつながりの奇跡とは? 考察&評価
『海に眠るダイヤモンド』の運命を紐解いた“声掛け”
そして第9話、ついに端島は1974年閉山へ。石油にエネルギー源を取ってかわられ、石炭自体は黒字でありながら閉山となった。 鉄平は、リナと甥の誠を助けるため、端島に被害が及ばないよう、ひとりで罪を背負い、島から出ていた。朝子は行方不明の鉄平を諦め、虎次郎(前原瑞樹)と夫婦になった。 運命の分かり道は突然に訪れる。けれど現代パートでいづみ(宮本信子)の家族が団結していく様子を見ると、けっして、虎次郎との結婚は間違っていなかったことと思わせる。 しかし鉄平の人生は、どうしても、運命のいたずらの恐ろしさを感じずにはいられない。リナや甥の誠、端島全体にヤクザの手が回らないよう、自らすべて罪をかぶり、島を出て逃げ回る人生を選ぶ。 自分は何も悪いことをしていないにもかかわらず、故郷に戻れない、愛しい人にも会えない。手紙も、書きはするが、届けば被害が及ぶかもしれないと思うと破るしかない。朝子に作ったギヤマンも結局渡せずじまいだ。 けれど、このドラマから伝わってくるのは、どうあがいても取り戻せないと思っていた喪失感を、意外な誰かが補い、希望をつないでくれている、ということだ。 神木が二役を演じた、鉄平と玲央が血縁関係になく「たまたま似ているように見えた」という展開には驚いたが、だからこそ、人のつながりの奇跡が浮かんでくる。いづみは玲央に声をかけた理由をこう言う。「ただ、声をかけたかったのかも。どうかした? 元気ないねって。外勤さんみたいに」。 きっと、鉄平も知らない土地で「そこのあなた、どうかした?」と〝外勤〟を続け、誰かを幸せにしていたのだろう。そうして、自分の新たな居場所も作ったのだろう。1つの小さな声かけが、新たなきらめきを生んでいく――。 しかし、鉄平と玲央は神木の二役であったが、最終回、「そういえば全然似てない」と思ってしまった。神木隆之介の演じ分け、恐るべしである。