日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』で最も演技が良かったキャストは? 余韻が残る神演技を解説。ドラマ史に名を刻んだ役者は?
ドラマ『海に眠るダイヤモンド』が、12月22日に最終回を迎えた。青春ドラマでもあり、ミステリーでもあり、社会ドラマでもある。一言では括れない、非常に特殊な作品だった。単純なトレンドや視聴率だけでは語ることができないこのドラマの魅力を、特に印象に残ったキャスト7人を振り返りながら改めて語っていきたい。(文・かんそう) 【写真】クライマックスに号泣…実力派キャストの貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『海に眠るダイヤモンド』劇中カット一覧
一人二役どころではない演技の振り幅・神木隆之介
端島で明るく真っ直ぐに生きる青年・鉄平、そして現代で東京でホストとして働きながら死んだように生きる男・玲央の一人二役を演じた神木隆之介。「一人二役」と言葉にするのは簡単だが、実際に「別人」を演じるのは並大抵なことではない。 目の肥えた視聴者にとっては、一役を演じるだけでもそこに「中の人」を感じてしまった瞬間に冷めてしまう。しかし神木隆之介は完璧に演じ分けた。単に見た目や喋り方の違いではない、その役を纏っている「空気」が全くの別人のものだったのだ。 それは31歳という若さにも関わらず、圧倒的なキャリアを誇る神木隆之介の演技の「厚み」によるものだろう。鉄平の真っ直ぐさ、玲央の軽さ、まさに正反対な二人の人間を神木隆之介はありえないほど自然に横断する。しかもただ、演じるわけではない。 鉄平はともかく玲央は“変化”する役どころだ。いづみを通して端島の歴史に触れ、少しずつその人生観が変化していく。ぜひ1話の玲央、5話の玲央、最終回の玲央それぞれの顔つきや言葉を比べて見てもらいたい。一人二役どころではない、一人三役、一人四役を演じた神木隆之介の凄さに恐怖すら感じた。
圧倒的な愛の表現・杉咲花
炭鉱員たちの憩いの場・銀座食堂の看板娘として働く朝子を演じた杉咲花。記憶障害の脳外科医を演じたドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)での好演が記憶に新しいが、『海に眠るダイヤモンド』の朝子もまた杉咲花の代表作の一つになったと言っても過言ではないだろう。 杉咲花の凄さは「愛の伝え方」だ。恋愛要素のあるドラマや映画では欠かせないキス。しかし、杉咲花はキスシーンがひとつもなくとも最愛の相手に対する想いを、その目で、その言葉で、その表情だけで、杉咲花は圧倒的な愛を視聴者の心に響き渡らせる。 特に6話、噛んだり、言い淀んだりしながらたどたどしく言葉を紡ぐ鉄平と、台本読まずにカメラ回してんのか...?と思ってしまうほど「初見」の相槌を打つ杉咲花。 あえて、今時の言葉にするのなら「ガチ恋」。見ているこっちが叫びたくなるような二人の「じれったさ」は、もはや現実と言っても過言ではない。 前述したドラマ『アンメット』伝説の9話の長回しを彷彿とさせる、『海に眠るダイヤモンド』屈指の名シーンだ。