日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』で最も演技が良かったキャストは? 余韻が残る神演技を解説。ドラマ史に名を刻んだ役者は?
気怠げな存在感が底なし沼・池田エライザ
博多から逃げるように端島にやってきた謎の歌手・リナを演じた池田エライザ。誰かと会話をしていてもどこか陰のある表情、諦めすら感じさせる声。「ミステリアス」という言葉では括れないような複雑な人物像を漂わせるその存在感は、『海に眠るダイヤモンド』において唯一無二の魅力を放っていた。 そんな複雑なキャラクターは、これまで正統派のヒロインから特殊すぎるキャラクターまで、様々な池田エライザの「多面性」と非常にマッチしていた。言葉を選ばずに言えば「何を考えているか分からない」だからこそ底の見えない「沼」のような魅力にハマってしまう。 リナは、まさに池田エライザにとって最高のハマり役だった。
恐ろしいほどの“魔性の女”・土屋太鳳
鉄平の幼なじみで鷹羽鉱業の職員の娘・百合子を演じた土屋太鳳。基本的に気が強く高飛車、一見悩みなどない自由奔放なお嬢様のようなキャラクター。鉄平や朝子を振り回す言動は「魔性」としか言い表せられないほどの魅力を放っていた。 特に1話で朝子に「鉄平が帰るっていうから付いてきちゃった」と悪戯な表情を浮かべるシーンは恐ろしさすらあった。しかし、その心の内には誰にも言うことができない大きな傷を抱えていた。その傷が長崎の原爆に巻き込まれた被爆者という一面もある。この圧倒的な「陽」の部分と、視聴者が目を塞ぎたくなる「陰」の部分。 「神も仏もね、何にもしないとよ。何かするのはみんな人間のわざ。人を生かすも殺すも、みんな人間がすることよ」 この和尚のセリフを真っ直ぐに受け止められる役者が何人いるだろうか。百合子を完璧に演じることができるのは土屋太鳳をおいて他にはいなかった。
男も狂わせる男らしさ・清水尋也
鉄平の幼なじみであり、鷹羽鉱業の幹部職員の息子の賢将。気の良い青年でありながら、自分とは正反対の温かい家庭で育つ鉄平に対し、時に劣等感のようなものを抱く一面もある非常に難しい役どころだ。 不器用ながら大きな優しさを持っている人物で、もし『海に眠るダイヤモンド』のキャラクターたちが現実に存在していた場合、一番「モテる」のは間違いなく賢将だろう。 特に、4話の吹き荒れる台風の中で見つけた百合子のメダイを本人に返し、母への想いが溢れ号泣する百合子を人の流れから見えないように隠すその姿、あまりのイケメンぶりに同じ男だが発狂した。 この「いやらしさのないカッコ良さ」は、演じている清水自身が賢将と同じ、いやそれ以上の優しさを持っているから表現できるのだろう。