3話考察『海に眠るダイヤモンド』孤島に咲く花、杉咲花の笑顔!
現代のいづみたちは廣田か、それとも辰雄か?
2018年の世界では、いづみ(宮本信子)が家に住まわせている玲央(神木隆之介、二役)に、和馬(尾美としのり)や鹿乃子(美保純)ら子どもたちが不信感を募らせる。そんな中、鹿乃子の娘で医学部に現役合格した千景(片岡凜)だけは「ホストってお客さんと寝るの?」、「(いづみと玲央は)本当に愛し合ってるのかも」と興味津々。実は千景自身がホストにハマり、400万もの売り掛けをためていたのだ。玲央への質問も予想も、自分を重ねて発していたのかもしれない。 千景はホストといるところを玲央に目撃され、家族の知るところとなるが、鹿乃子は怒りながらもポンとその借金を肩代わりする。 これまで玲央が見てきたのは、膨れ上がった売り掛けを返すために必死に夜の世界で働き、時に病んでしまったりおかしくなったりする子たちだった。ホストにハマったという状況は同じでも、なんの傷もつくことなく終わる千景に、玲央は「全然わかんねえ」と繰り返す。その中身は全く違うけれど、玲央が見てきた子たちと千景との違いを、朝子と百合子の差と重ねてしまう。 3話冒頭では、職員たちの実情を見聞きした鉄平が「社宅割り当て得点制度」を発案するようすも描かれていた。 「端島は炭鉱夫あっての島だ。彼らが主役なんだから鉱員のやる気の出る環境にしないとおかしくないか?」 鉄平の意見を聞いて、賢将は会議でこの制度を提案。しかし幹部職員である父・辰雄(沢村一樹)は「(仕事が)嫌なら辞めればいい」と言い放つ。「下っ端」が軽んじられている様子は、このドラマと同じチームで作られた映画『ラストマイル』を思い出す。そんな中、炭鉱長の廣田(渡辺憲吉)が、 「労働とはどうあるべきか」「過去の愚かしさと罪深さを反省し向き合わなきゃならない労働者は屈服させる相手ではない」 と語り、新しい点数制度の導入を認める。鉄平が朝子と眺めた桜も、この廣田が福利厚生費で本土から移植されたらしい。廣田が端島を去り、辰雄が新しく炭鉱長になることで、炭鉱夫たちは、端島はどうなっていくのか、不安が広がる。さらに言えば、現代のいづみ一家は、端島でいうところの廣田なのか、辰雄なのかも気になるところだ。 ちなみに、この得点制度は実際に端島で採用されていたらしい。海底水道といい、テレビの普及といい、綿密な取材に基づく事実を土台にして描かれていることで、端島のシーンにより深みが増しているように思う。