3話考察『海に眠るダイヤモンド』孤島に咲く花、杉咲花の笑顔!
食堂から動けない朝子に 「キラキラ」をくれるのは鉄平(神木隆之介)
今回スポットライトが当てられたのは食堂の娘・朝子(杉咲花)。日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS 毎週日曜よる9時~)3話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
食堂の娘してりゃいいんだから
1話のリナ(池田エライザ)、2話の百合子(土屋太鳳)に続き、3話で描かれたのは端島の食堂の娘、朝子(杉咲花)のこと。 勤めていた映画館が暇になった百合子は「カルチャーを感じる仕事をしたいの」「朝子はいいわよねえ、何も考えずに食堂の娘してりゃいいんだから」と話す。「島全部が幼なじみ」の端島にあって、それでも島の外に出て学生時代を過ごした鉄平(神木隆之介)や賢将(清水尋也)、百合子と違い、食堂の娘として生まれた朝子は島から出ることさえできない。 幼い頃の朝子が、百合子に自慢されたキラキラと輝くメダイ(※キリスト教信者のお守り)に触ろうとして手を跳ね除けられたこと、代わりにキラキラのガラス瓶をとろうとして海に落ち、赤痢になってしまったこと。オーディション前に眺めていたワンピースを百合子が着ていたこと。同じ島に生まれ育っていても、朝子と百合子の間には大きな隔たりがある。 そんな朝子にふいに訪れたチャンス、それが端島を舞台にした映画のオーディションだった。プロデューサーの夏八木(渋川清彦)に演技を絶賛された朝子は、オーディションを見に来た鉄平の母・ハル(中嶋朋子)たちからも「キラッと光っとった」と褒められる。しかし、オーディションは全て、借金で撮影所をクビになり、盗みを目的に島にやってきた夏八木によるウソだった。 島では普及率6割のテレビを、月賦でも自由に買うことのできない朝子の家。映画に出られたらテレビを買えるという希望も潰え、落ち込んだ朝子を元気づけようと、鉄平は桜の木が一本だけある中ノ島に花見に誘う。 「映画スターになりたかったんじゃなかとよ。ちょっとだけ食堂の朝子じゃない人になりたかったと。そんだけ」 キラキラしたものを求めていた朝子は、対岸から端島を見たことで、自分のいる狭い島も実はキラキラしていることに気づく。幼い頃、赤痢にかかった朝子に鞍馬天狗を名乗ってガラス瓶をあげた鉄平は、再び朝子に「キラキラ」を渡したのだ。 翌日の食堂で、花瓶として大事に使っているガラス瓶を「鞍馬天狗にもろうたと」と言う朝子。自分と鞍馬天狗とがつながり、自分こそが朝子の「初恋の人」であると気づく鉄平と、それを見る朝子の笑顔。二人の表情がたまらない。 3話かけて3人のヒロインが描かれてきた。リナがビンタと歌、百合子がダンスと台風、朝子が演技と花。それぞれの役者自身とキャラクター、両者の魅力が引き出された3話を経て、これから先の端島はどんなふうに描かれていくのだろうか。