ロシア派遣の「北朝鮮兵」が味方を“誤射”も専門家は「当然の結果」…言葉の壁だけではない共同戦線を崩壊させる「3つの重大要素」とは
深刻な「言葉の壁」の弊害
ウクライナ国防省は北朝鮮兵士の誤射について「言葉の壁」が原因だと発表した。だが11月の時点で専門家は言語の異なる2国の軍隊では意思疎通に問題が生じ、同士討ちの可能性が高いと指摘していた。11月12日の記事から、軍事ジャーナリストのコメントを再録してみよう。 《もし半分がロシア兵、半分が北朝鮮兵といった部隊を編成したとして、ロシア語と朝鮮語ではコミュニケーションが成立しません。1秒で生死が分かれる最前線の戦場で、指揮官と兵士、さらに兵士同士で会話ができないというのは致命的な欠陥です。これなら民間軍事会社のワグネルが採用した囚人兵のほうが、言葉が通じるだけまだマシだと言えるでしょう》 《意思疎通に難のある2国の軍隊が交差すると、最悪の場合は敵軍と誤認して攻撃し、同士討ちとなってしまいます。他にも火力支援の問題があります。歩兵が敵軍に向かって攻撃する際、後方の砲兵隊が砲撃で支援するわけですが、同じ国の軍隊でさえ誤射が発生し、自軍を砲撃してしまうことがあります。仮に北朝鮮軍の兵士が突撃し、後方にいるロシア軍が砲撃を担当するとして、意思疎通が難しければ誤爆の危険性は上昇します》
セオリーを無視したロシア軍
今回の誤射報道を受け、軍事ジャーナリストは「ロシア軍と北朝鮮軍が共同戦線を張るには戦略、訓練、ノウハウの3つが完全に欠如しています。これでは成功するはずがありません」と指摘する。 「まず戦略面から見てみましょう。もともとロシアも北朝鮮も国際的に孤立しており、その軍隊も多国籍軍に参加したり、他国軍との合同軍事演習を実施したりした経験が少ないわけです。言語の異なる2国の軍隊が長期間同じ釜の飯を食い、かなりの意思疎通が可能になったとしても、『できることなら共に戦うのはごめん被りたい』というのが普通の軍隊の本音です。どうしても共同戦線を展開する必要がある場合、その2国軍は別々に行動し、離れた地域で作戦に従事するのがセオリー中のセオリーなのです」 だがウクライナ国防省は「北朝鮮軍の兵士はロシア軍の海兵隊と空挺部隊の一部に組み込まれて戦線に投入」と指摘したのは前に見た通りだ。「別々に行動する」という共同戦線の戦略セオリーを無視したのだから、同士討ちが起きたのは必然だと言える。