京都の禅寺〈両足院〉で見る。日本の伝統建築と融合する、ポール・ケアホルムの世界。
会場となった〈両足院〉は京都・祇園にある〈建仁寺〉塔頭のひとつ。静寂と洗練が共存する歴史ある寺院だ。手入れの行き届いた庭を持つ大書院は、天井の低さや窓の外に広がる自然の景色にケアホルム自邸と通じるものがあるという。
展示されているのは代表作であるラウンジチェア《PK24》、デイベッドの《PK80》など、自邸でも使われている家具の数々。1952年にデザインされつつも2022年にようやく製品化された《PK0A》もある。それらは静けさを持ちながらも圧倒的な存在感を放ち、日本の伝統建築との完璧な調和をみせる。さまざまな椅子に自由に腰掛けて庭を眺め、空間との相性を体感できるのが何よりの贅沢だ。
もう一つの展示空間である方丈は雰囲気が一変する。ケアホルムの家具の美しさの神髄である構造を伝えるべく、細部にまでこだわり抜いたパーツがアイテムごとに展示されているのだ。このアイデアはかつて、70年代にケアホルム自身のディレクションで開催された展覧会からインスピレーションを受けたもの。強度を求めながらもデザインの一部として美をまとったネジ、自然界の意匠を屋内に持ち込む役割を果たした石など、さまざまな角度からケアホルムの美意識を読み解くことが可能。分解されることでミニマルな美が強調されるパーツは、その規則正しい連続性などにおいて日本建築に通じるものがあることにも気付かされる。広縁に置かれた椅子に掛け、思いを馳せるのもいい。
本展に合わせケアホルムのしつらえとなった茶室では、江戸時代の天目茶碗で抹茶やコーヒーをいただく茶席が用意されている。図録でもある書籍『POUL KJÆRHOLM 共鳴する日本の美意識』を手にすれば、さらに深く理解するガイドとなるはずだ。 ケアホルムの没後、その家具のすべてを製造販売してきたフリッツ・ハンセンによる新たな試みとなった本展。デンマークデザインと日本の伝統建築が交差する場で、ケアホルムの普遍的な美に触れ、素材や構造が織りなす調和とともに実証された親和性を体感したい。
『ポール・ケアホルム展 in 京都』
〈両足院〉京都府京都市東山区小松町591。TEL03・3400・3107(フリッツ・ハンセン)。~2025年1月19日(12月31日~1月3日休館)。13時~17時(最終入場16時30分)。入場料1,000円(現金のみ)。オンライン予約優先入場。
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