レディース暴走族のトップで覚醒剤の売人だった女性は、改心し「みんなの母親」目指す(上) 何度裏切られても、刑務所や少年院を出た社員を雇い続け…
あるメンバーへのシメ会で、19歳の広瀬さんらは逮捕された。暴行は残虐だった。「1人じゃ何もできないくせに、集団になると強い気持ちになっちゃう。みんなの手前、かっこつけてしまった」 今も被害者に謝罪はできていない。 「本当にひどいことをした。会ったら謝りたいけど、二度と関わらないでと言われた」 ▽覚醒剤の売人 後輩を引き連れるには金が必要で、覚醒剤の密売人となった。「薬物禁止」はチームのおきてのはずだ。「建前はね。私は良いけど、後輩は駄目」。当時の横暴さがうかがえる。 結局、薬物で逮捕され、23歳の時に懲役5年を言い渡された。裁判所の傍聴席は、10代の女の子で満席だった。 「余裕だよってかっこつけたけど、法廷のドアが閉まった瞬間、号泣した」 それでも改心はしなかった。出所後、再び売人に。そして妊娠中に逮捕された。今度は1年半の実刑判決だった。 ▽獄中出産 29歳、2度目の服役中に出産をした。
「腰縄に手錠をした状態で、刑務官3人に囲まれて男の子を出産した。あんな所で産むもんじゃない」 出所後はさすがに更生を誓い、真面目に働こうと介護や給食調理の仕事に就いた。しかし、過去が露呈すると働きにくくなる。世間が「元犯罪者」に向ける目は想像以上に厳しかった。「真面目に生きるのを諦めかけた。食べていくために、また悪さをしてしまった」 獄中出産した男の子には懐かれず、生活も不安定で、自分で育てることを諦めた。しかし、2人目を妊娠したことで「この子はシャバで育てたい」と、今度こそ更生を決意した。 ▽建設会社の社長に その頃、「次は真面目に働けよ」と受け入れてくれたのが、建設業界だった。過去を隠さず働けるのは心地よかった。 31歳だった2009年、元夫と建設業を始めた。こつこつと仕事を増やし、現在は約40人の社員を抱える。そのうち約8割が刑務所や少年院からの出所者だ。 法務省と連携して元受刑者を積極的に雇う「協力雇用主」として登録している。法務省によると、協力雇用主の登録数は2万5千あるが、実際に元受刑者を雇用しているのは4%にとどまる。広瀬さんの「大伸」は珍しい存在だ。