【日本初】乳がんのプラットフォーム試験が開始 複数の治療を同時進行で評価可能に 新薬の早期承認に期待 日本臨床腫瘍研究グループ
日本臨床腫瘍研究グループは11月5日、日本初の乳がんプラットフォーム試験「S-FACT試験」を開始したと発表しました。 プラットフォーム試験とは、一つの病気に対して複数の治療を評価するもので、試験中に新たな治療法を追加したり、対象患者の追加や除外をすることも可能です。 これまで日本では海外で承認済みの新薬が国内で承認されるまでの時間差“ドラッグ ラグ”や、海外ですでに使われているのに日本での開発が進まない“ドラッグ ロス”が課題とされていました。乳がんの治療においても特に”ドラッグ ロス”が喫緊の課題となっていましたが、コロナ禍でプラットフォーム試験の導入が加速したことから、乳がん領域では日本初となる新規薬剤開発プラットフォームの構築に至ったということです。 今回開始された「S-FACT試験」は、ステージ 2~3の乳がん患者を対象に、手術前の標準治療と試験治療の効果を比較。手術後の予後データも収集して長期的な治療効果の解析も行い、新しい治療法の実用化を目指します。 「S-FACT試験」は現在、名古屋市立大学病院をはじめとする国内の6施設で行われていて、治験の登録者10数名に対し、今年7月から薬剤の投与を開始。費用については、保険診療分は患者に請求されますが、新規薬剤分の患者負担はないということです。 会見を行った名古屋市立大学の特任講師・能澤一樹さんは「こうした治験や臨床試験は新しい薬剤を早く試すことができるチャンス。患者にとっても大きなメリットになる。S-FACT試験はまだまだ数が少ないが、しっかりと運用して増やしていくことで、ドラッグ・ロス解決への糸口にしたい」と意欲を示しました。