「教育熱心と虐待は紙一重」 中学受験ブームに潜む「教育虐待」の闇 「勉強ができない息子を父親が刺し殺したケースも」
口先では「子供のため」と言うが……
このような殺人事件にまで発展するのはまれだとしても、なぜ親はわれを見失うほどに子供の勉強に夢中になるのか。学校の先生方によれば、親が「教育熱心」から「教育虐待」へと一線を越えてしまう場合、次のような要素が関わってくるという。 (1)リベンジ型……自分が受験に失敗したことに劣等感を持っている。そのため、子供を使ってそのリベンジを果たそうとする。 (2)競争型……「学力が高い子を育てた親が優秀」だと思っている。ゆえに「立派な親」を目指して子供に勉強を強いる。 (3)発達障害型……親が発達障害のため、分刻みにスケジュールを決めて徹底的にそれを守らなければ気が済まず、それを自分の子供にまで強制する。 (4)成功体験押し付け型……自分が高学歴であることを誇り、そうでない人を見下している親が、子供にもその価値観を押し付ける。 これらに共通するのは、親が自分の目的のために子供に勉強を強いている点だろう。口先では「子供のため」と言いつつ、目的が自己実現にすり替わった時に、言動が暴力化しやすいのだ。 こうした話題になると、親の間からは「どこからが教育虐待なのか判断が難しい」との声が上がることが多いが、子供の心身を傷つける行為は全般的に虐待となる。親主体ではなく、子供主体で考えなければならない。
成人後の精神疾患も
教育虐待を受けた子供たちの心身には、その“傷つき体験”から一般的な虐待の被害者と同じ症状が現れる。 過度のプレッシャーの中で心を病んでうつ病になる、自己否定感から自傷をくり返す、志望校に合格しても燃え尽き症候群(バーンアウト)から不登校や学力不振に陥るといったことが起こるのだ。最近は「受験うつ」を専門に治療をするメンタルクリニックも増えてきた。 小学生のうちは親の管理下に置かれるが、中高生になると家から逃れようとする子供も出てくる。それが家出や非行につながる。かつてタレントとして活躍した故・飯島愛氏も、小学校時代に親による教育虐待を受け、その反動で中学時代から家出や夜遊びをするようになったという。 教育虐待の被害者が成人した後に生きづらさを抱えるケースも多い。学生時代はどうにか乗り越えられても、社会に出てから幼少期に受けたトラウマに苦しめられ、精神疾患になるのである。