他に選択肢がないから、副将とバックスリーダーに就任 「柄じゃない」けど、後輩たちと両親のため、もう逃げない
両親に恩返しを
秋のリーグ戦が始まった。ウィング(WTB)やフルバック(FB)としてフル出場を続けてきた。チームは大敗を繰り返してきた。トライを奪われるたび、円陣で仲間に呼びかけてきた。「次だよ、次」「もっと、タックルできるはずだよ」。何があっても、ポジティブに呼びかけ続けてきたつもりだった。 10月27日の千葉商科大学戦。いわき市から車で3時間かけて、両親が手土産持参で応援に駆けつけてくれた。照れくさかったから、込み入った会話なんて交わしてはいない。やっぱり、チームは負けてしまった。ただひたすらに、伴場はタックルを繰り返した。ただひたすらに、仲間に声をかけ続けた。 続く11月3日の防衛大学校戦。この日も、ただひたすらに、伴場はタックルを繰り返した。ただひたすらに、仲間に声をかけ続けた。 それでも、結果は、7-69。やっぱり、チームは敗れてしまった。8チーム中の7位以下に沈むことが決まった。2年連続で3部上位との入れ替え戦に回ることが、正式に決まった。 負け続けるなか、それでもチームは成長を重ねてはいる。「ダメなんです。『成長しているから、まあ、いいや』ってなっちゃうのが、一番ダメ。入れ替え戦、絶対に勝たなきゃならないから」 「これ以上、両親に迷惑をかけることはできない。だから、僕のラグビーは今年で終わり。しっかり働いて、恩返ししたい。だから、入れ替え戦、絶対に勝たなきゃならないんです。後輩たちのためにも」 ちょっと厳しい表情で伴場はそう言った後、すぐ笑顔になって、後輩たちのもとに歩み寄った。致命的なミスを犯した後輩に、笑顔で「気にするなよ。でも、あのプレーはさ……」。負傷しがちな後輩に「大丈夫?」。 そんな感じで、話しかけて回っていた。
やっぱり最終章は…
決して、理想のリーダーではないのかもしれない。決して、完璧なリーダーではないのかもしれない。 それでも、伴場はリーダーになった。 伴場なりの、リーダーになった。 2024年の東京都立大学ラグビー部。物語の最終章は、2年続けて、入れ替え戦に設定された。 昨年も、そうだった。時間は待ってはくれない。最終章に向けて、瞬く間にページはめくられていく。 選手も、マネージャーも、一人ひとりが、それぞれの足跡を刻みながら、物語は深まっていく。
中川文如